ベルギーが3位決定戦でイングランドに2-0で快勝し、同国の歴代最高成績となる3位に入った。前半4分にMFムニエが先制点を挙げ、史上最多タイとなるチーム10人目の得点者となった。大会のハイライトに日本戦を挙げる選手もいるなど、大苦戦の決勝トーナメント1回戦をきっかけにベルギーの歴史が塗り替えられた。

 6万4406人が響かせた歓声には、熱狂の中にねぎらいが交ざったような穏やかさがあった。勝っても負けても次はない。そんな3位決定戦の独特な雰囲気をよそにベルギーは意地を見せるかのごとく走った。開始4分でMFムニエが左クロスを右足でたたき込む。後半37分に大黒柱のE・アザールが追加点を挙げ、試合を決めた。マン・オブ・ザ・マッチのE・アザールは「決勝でプレーしたかったが、チームとして素晴らしいプレーをした」と胸を張った。

 試合後、今大会で最も印象的だった瞬間を聞かれたムニエは、迷いなく「間違いなく日本戦だ」と答えた。決勝T1回戦、2点差を追いつき、後半ロスタイムの決勝点につながった切れ味抜群のスーパーカウンターは最後まで脅威だった。日本戦で決勝点を挙げたMFシャドリにも、ゴール直後の光景が鮮明に残っている。「今までで最も感動的だった」。安堵(あんど)も入り交ざった笑みだった。ムニエは続けて証言する。「あれでチームとして成長した」。敗戦の瀬戸際まで追い詰められ、はね返したことが自信になった。勢いそのままに準々決勝でブラジルも撃破。日本の健闘はベルギーの糧になった。

 E・アザール、ルカク、デブルイネの攻撃3枚看板に目がいきがちになるが、ムニエのゴールで今大会の得点者数は10人に。82年フランス、06年イタリアのW杯記録に肩を並べた。準決勝に進んだ4チームの中で、6試合14ゴールは最多。大会を通じて1試合平均約2・3得点と、“赤い悪魔”の異名に恥じない攻撃力を見せつけた。

 すべてを終えたマルティネス監督は言った。「(4位だった86年大会から)32年かかった。この旅は成功だったが、すぐに前を向いて次の目標に向けて改善しなければならない」。攻め続けるスタイルを最後まで貫き、母国の歴史は変えた。4年後は決勝の舞台へ。大会後に首都ブリュッセルでのセレモニーを終えたあと、新しい旅が始まる。【岡崎悠利】