<箱根駅伝連載

 戦国駅伝:(6)山の神>

 俺が「新・山の神」だ。山登りの5区で、3度の区間新を記録した東洋大の柏原が卒業。新たな山の神として、明大の大江啓貴(ひろき・4年)が名乗りを上げた。5区の距離は23・4キロ。06年に箱根最長距離に変更となり、それ以来、5区を制した大学が4回も総合優勝を遂げた。大江が悲願の区間賞とともに明大を64年ぶりの優勝に導く。

 大江は5区で、見えない柏原の背中を、2年連続で必死に追いかけた。ともに区間2位。しかし、11年は約2分、前回は約3分と差が広がった。「今までずっと柏原さんの影を走っていた。今回、やっとチャンスが回ってきた」。満を持しての“山の神“宣言だ。

 1年の時に6区の山下りで箱根デビュー。2年でも12月まで山下りを予定していた。しかし、大会直前に、5区の選手が故障。急きょ、山登りを指名された。「代役ですから気楽に上れた。前回は期待の重圧で力が入った」。最後の箱根こそ、最高の走りで区間賞をつかみたい。

 区間記録は、前回の柏原がマークした1時間16分39秒。大江は前回、1時間19分34秒だった。「柏原さんの記録を抜くのは不可能。でも18分台は最低条件で、個人的には17分台を狙いたい」。そのためにも、練習後のスクワットで脚力強化は欠かせない。ふくらはぎの太さでは「誰にも負けない」。

 起伏の激しい土地を持つ兵庫・三田市で育った。実家の周りが、格好の練習場所だった。「家のそばを1周すると約7キロ。そこをいつも走っていました」。自然で養われた脚力をスクワットで強化し、出雲、全日本、箱根の3大学生駅伝では、いまだに他校の選手に抜かれた記憶がない。

 明大は20年の第1回に参加した4校のうちの1校。しかし、49年の25回大会で総合優勝を遂げて以来、63年に往路優勝をしただけ。「今回は過去最強の明治」。明大の新たな歴史のスタートは大江の山の脚力にかかっている。【吉松忠弘】(おわり)

 ◆大江啓貴(おおえ・ひろき)1990年(平2)4月21日、兵庫県三田市生まれ。兵庫・けやき台中-須磨学園高。中3の3000メートルで全国7位。箱根は1年から3年間すべて山に出場。前回は5区で区間2位。167センチ、54キロ。<各校「山の神」候補>

 駒大

 村山謙太<2>

 1時間9分4秒(2区(9))

 前回1年でエース区間の2区に抜てき。その走りを初の5区で生かす。

 東洋大

 定方俊樹<3>

 初出場

 柏原卒業後の山の神を初出場の定方に託す。1年の出雲以来の3大駅伝出場。

 早大

 山本修平<2>

 1時間19分52秒(5区(3))

 2年連続の5区となる。前回は区間3位。早大復活の鍵を握る。

 日体大

 服部翔太<3>

 1時間2分26秒(1区(2))

 異例の3年主将。11年3区、前回1区ともに区間2位の走力で初の5区に挑む。

 ※左から学校名、氏名、<学年>、タイムは前回の箱根で走った区間の時間、(前回の区間(区間順位))。