公務員ランナーに追い風が吹いた。埼玉県は29日、4月1日付で発令される平成25年度の人事異動を公示し、春日部高定時制の事務職員として働く男子マラソンの川内優輝(26=埼玉県庁)に異動はなかった。在籍5年目の新年度も、事務職員として勤務する。

 通常、正午すぎに出勤し午後9時半まで勤務する川内は、午前中に練習し週末の公休日や有休を使いレース出場という、独自スタイルで「無名の市民ランナー」から日本トップ級に成長した。異動により勤務体系が変われば、川内流の変更を余儀なくされる。「仕事と競技の両立」を掲げ「どこに異動しても範囲内で頑張る」と話す一方、「(残留の)希望は出していますが、同期でも希望は通らなかったという話を聞いています。公務員としては待つしかない。もう4年ですしドキドキです」と不安を隠せなかった。

 「彼の希望や職場の事情も鑑みて総合的な判断となったようです」と県庁関係者。従来通りの「自己流」が継続されることで、代表選出が確実な8月の世界陸上モスクワ大会に向け、弾みがついた。「ホッとしました」と周囲に話す川内は、異動となれば取り消しの可能性があった過密レースを、予定通りに消化する。