<男子ゴルフ:日本オープン>◇3日目◇17日◇埼玉・武蔵CC豊岡C(7083ヤード、パー72)◇賞金総額2億円(優勝4000万円)◇観衆1万1596人

 石川遼(18=パナソニック)が、ゴルファー日本一に王手をかけた。首位と5打差の38位から7バーディー、ノーボギーの65と猛チャージし、通算5アンダー211で単独首位に浮上した。世界選抜の一員として出場した前週のプレジデンツ杯でウッズ(米国)を観察して学んだスイングを実践。6番パー5では第1打を池に入れながらバーディーを奪った。最終日は今季5勝目、1928年(昭和3)大会を19歳で制した浅見緑蔵を抜く史上最年少優勝に挑む。

 石川のスケールの大きさをあらためて印象づけるバーディーだった。6番532ヤードのパー5。第1打を池に入れ、1罰打でドロップした場所は残り258ヤード。ラフは長く、周囲は4本の木に囲まれていた。そんな厳しい位置から5番ウッドでピンを狙った。

 石川

 前の高い木を越えて、打てるんじゃないかと。思い切り打ってちょうど良い距離。結果はちょっと想像できないけど、とにかく良いショットを打とう。

 集中力を研ぎ澄ませて放った一打は、乾いた打撃音とともにピンへ一直線。ピン手前3メートルで止まって、バーデイーとした。ロングとはいえ、第1打を池ポチャしたホールで、バーディーを奪うという離れ業。それでも「僕も池に入れてバーディーの記憶はないです」。興奮することなく、笑顔で淡々と振り返った。

 「高い確率でフェアウエーに打てて、そこから高い確率でグリーンに乗せて、というのが当たり前のようにできた」。パーオン率は1位の83・33%。出場61人中唯一、自身5度目のボギーなし。スコアの65は73年関東オープンで記録された67を破るコース新。貫禄(かんろく)すら漂う18ホールだった。

 ウッズら世界の一流のスイングを頭に描き、実践した。世界選抜の一員として出場したプレジデンツ杯。練習や試合で「何か、自分と違うように見えるな」と、ウッズらを観察した。そこで(1)スイングの際、クラブのヘッドが体の回転に先行しない(2)体が回転後にボールが飛んでいく(3)その結果、ボールをしっかりコントロールできる。そんな印象を持ったという。「なかなか言葉にしにくいんですけど…。今日はそこを注意してやりました。直接スイングに結び付いたかわからないんですけど、感触は良かった」と満足げだ。

 単独首位で最終日を迎えるのは今季6度目で、過去5戦中4勝。「明日はこんなにうまくいかないと自信を持って言える」と、自虐的に言って笑いを取るほど落ち着きがある。81年ぶりの最年少記録での日本一へ、視界は大きく開けている。【阿部健吾】