石川遼(19=パナソニック)が、未来のスキー・クロスカントリーの五輪代表の育成に一役買う。12日、毎年恒例の雪山スキー合宿を、新潟県湯沢町でスタート。昨年よりも500メートルほど長くなった特設クロカンコースで、下半身と心肺機能の強化に取り組んだ。最終日の15日には地元小学生とのタイムレースを開催。さらに県と町は、コースを今季いっぱいオープンし、若年層へのクロカン普及に役立てる方針を固めた。

 見事なスケーティングで、斜面を滑り上がった。「北島康介さんの平泳ぎのイメージ。大きなストロークで!」。自分に言い聞かせながら、合宿初日から石川は約10キロを走破した。そんな石川の足跡が、湯沢町の子どもたちを、クロスカントリーでの五輪出場に導くかもしれない。

 敷地内に約1週間がかりで特設コースをつくり、万全の受け入れ態勢を整えたゴールド越後湯沢CCの貝瀬春夫支配人は「今回このコースは、スキーシーズンが終わるまでこのまま残す方針です」と明かした。

 昨年も同CCで石川がクロスカントリー合宿を敢行。すると「いつもクロカンはできるのか」などの問い合わせが殺到。反響の大きさに、湯沢町が敏感に反応した。上村清隆町長は「地元の子どもたちのために、冬を通してコースをオープンさせようということになりました」と説明した。

 通常はゴルフ場の閉鎖に伴い、積雪で通行不能になる4キロの道のりも、シーズンを通し県が除雪を行う。湯沢町はコース整備のために、約100万円の補正予算を組み、照明設備も整えた。15日、石川も参加する小学生クロカン大会で、子どもたちの使用が始まることになる。

 湯沢町はアルペンスキーがさかんで、皆川賢太郎、柏木久美子ら五輪選手も多く輩出している。一方で「クロカンは五輪に選手を送り出したことがない。石川選手と滑ることをきっかけにクロカンを好きになり、このコースで練習をすることで、五輪に出る選手が生まれたら」と同町観光協会の上村信男専務理事。現に同町には距離コースも、大会もない。石川の合宿をきっかけに、クロカン文化も根付くのではと期待する。

 石川は「僕に憧れて五輪?

 ちょっと大げさじゃないですか」と笑った。だが「滑り降りるアルペンの方が、体力的にきついクロカンより親しみやすいかも。だからこれをきっかけに、クロカンに興味を持ってもらえたら」とうなずいた。「遼コース」にはぐくまれた「遼チルドレン」が五輪を席巻する日が来るかもしれない。【塩畑大輔】