熊本の女は強かった-。熊本市出身で、ツアー出場8試合目、生涯獲得賞金0の野口彩未(20=フリー)が4アンダー68で2位発進した。パイプいすで「SOS」の文字をつくった熊本国府高出身で、被災地を心配しながらも踏ん張った。
見えない力に背中を押されているようだった。13番パー4、野口が残り140ヤードの第2打を8番アイアンで打つと、球は直接カップインしてイーグル。これまで出た7試合はすべて予選落ちしており、「熊本に元気を届けたいけど、これまでの成績じゃどうかな」と思っていた。それがツアー自己ベスト73を大幅に更新する68。笠や上田ら実力者とともに、順位ボードの上位に名を連ねた。
母校が校庭にパイプいすで文字を描き、水やパンなどを求める映像に「胸が締め付けられる思い」が続いた。やはり母校の中学も水などが足りず、ニュースで取り上げられた。野口も14日の地震の際は「自転車置き場の屋根に逃げた」上、本震は自宅のベッドの中で恐怖に震えた。家の中は物が散乱し「崩壊しています」。ゴルフ練習場の駐車場で母恵美さん(41)と車中泊した。
当初、今大会は欠場を考えていた。だが、恵美さんに「プロゴルファーは仕事だから、覚悟をもって行ってきなさい」と叱咤(しった)され、出場を決意。救急車や消防車が次々と通り過ぎる中、普段は1時間半で行ける福岡まで4時間かけて車で送ってもらい、会場に向かった。
今は「自分は(物資供給など)何もできないかもしれないけど、ゴルフで頑張るしかない」と言えるようになった。浴場の開放など集めた情報は、すぐ恵美さんに送る。「あまりに多いので『ゴルフに集中しなさい』と返されました」と照れ笑い。母の強さも大きな支えになっている。【岡田美奈】
◆野口彩未(のぐち・あやみ)1995年(平7)11月4日、熊本市生まれ。10歳からゴルフを始め、11年九州ジュニア2位、12年同3位など。14年夏プロテスト合格。昨年スタジオアリス女子でデビュー、今季は予選会順位40位、先週まで6戦出場もすべて予選落ち。3月アクサ・レディース第2日の73がベストスコアだった。163センチ、60キロ。

