表純子(42=中部衛生検査センター)が思わぬ形で、ツアー通算5勝目を手にした。前半アウトで45と大崩れ。通算9アンダーの首位から逆に首位と7打差のイーブンパー31位に後退していた。だが、強風のため最終ラウンドが途中で中止となり、第2日終了時点の36ホールに短縮されて表の今季初優勝が確定。ツアー最多187戦連続出場中の鉄人が、世にも不思議な“逆7打差V”を飾った。中断時に首位だったイ・ボミ(27)佐伯三貴(31)は4位だった。

 優勝会見に、表が申し訳なさそうに姿を見せた。「複雑な心境ですね。中断の間、ロッカーでみんなに結構冷やかされたし」。首位スタートの最終日、9番を終えて首位に7打差まで後退していたのに…。

 強風でボロボロだった。6番パー3で「7」をたたく。第1打を左OB。打ち直しの第3打をグリーン右バンカー奥のラフに外し、第4打をバンカーに入れ、5オン2パット。9番パー5はダブルボギー。ボギーも3個。アウト45で9アンダーの貯金を吐き出した。

 その強風に助けられた。10番の第1打後、午後0時58分に競技が中断。同2時半、最終ラウンドの中止が決定。「アウト45」が帳消しとなって、前日の順位で優勝が決まった。「中断するとは思わなかった」。プレーしたアウトより、インの風が強かった。特に13番グリーン上。パーパットを打とうとした堀琴音のボールが10メートル動き、グリーンから出てしまう事態が起きた。競技委員が続行不可能と判断した。同地点で風速を測ると、瞬間最大15メートルに達していた。

 格好悪い優勝だが、神様がベテランを救ったのかもしれない。14年は右肘痛、昨季は左肘痛に悩み、今季は両方痛い。思い通りのスイングができない。それでも、11年開幕戦から187戦連続出場とツアー記録を更新中だ。今回の優勝で今後1年のシード、212戦連続となる11月の最終戦ツアー選手権リコー杯の出場権も得た。「うれしい。毎年、あと何年できるんだろう、と思ってやってるんで」。優勝賞金の一部は熊本地震の義援金に充てる。「次はちゃんと勝ちたいですね。これが最後だと、一生言われちゃいそうですもんね」。強くて優しい“鉄の女”が照れくさそうに笑った。【加藤裕一】

 ◆表純子(おもて・じゅんこ)1974年(昭49)2月2日、広島市生まれ。広島商ではバスケットボール部で高校総体出場。18歳から研修生でゴルフを始め、96年プロテスト合格。05年シャトレーゼクイーンズ、スタンレーレディースで初優勝から2週連続V。師匠は岡本綾子、昨年6月にツアー新記録の155試合連続出場を達成。159センチ、65キロ。

 ◆日本女子ツアーの競技成立 3日間54ホール競技の場合、最低27ホールを行えば成立する。賞金ランクに加算される賞金配分は27、36ホール完了で75%。2ラウンドとハーフの45ホール完了なら100%。54、または72ホール競技が悪天候などで完了できず、成立したケースは15年スタンレーレディース以来63試合目。