<女子ゴルフ:NEC軽井沢72>◇初日◇12日◇軽井沢72G北C(6603ヤード、パー72)

 被災地で1人ゴルフ部を守る高校3年生が、プロに交じって懸命のプレーをみせた。主催者推薦で出場したアマチュアの岸部桃子(福島・富岡高3年)は、1バーディー、6ボギー、1トリプルボギーの80で初日を終えた。名前が同じで、あこがれてきた上田桃子との同組に「うれしかったけど、緊張しました」と苦笑い。前後の組にも福嶋、北田、申ジエら大物がそろう中、東北ジュニア2位の実力は発揮できなかった。

 最終ホールでトリプルボギーをたたいたが、それでも「スコア申告の後(上田)桃子さんに『アプローチ、パットはとてもいいよ。飛距離を伸ばせば大丈夫』と言われました」と笑顔でクラブハウスに戻ってきた。常に前向きなのには、理由がある。「震災後も、いろいろな人の応援でゴルフを続けることができた。それからスコアよりも、ゴルフに取り組む姿勢の方が大事だと考えるようになった」という。

 富岡高は福島第1原発から20キロ以内の「警戒区域」に入っている。ゴルフ部に全国から集まっていた生徒は、みんな実家などに避難したまま、帰ってこられなくなった。それでも岸部は「部長(主将)の私もいなくなったら、みんなが帰ってくる場所がなくなる」とゴルフ部でただ1人、いわき市・磐城桜が丘高に設けられた富岡高のサテライト校へ通い続ける。

 「昨日も部員のみんなが応援の電話やメールをくれた。私の卒業までに、みんな戻ってくると言ってくれています」。福島に身を置き、プロ大会でも活躍する姿を見せることで、部員の絆をつなぎとめている。

 試合直前の12日未明には、富岡町を震度5弱の強い地震が襲った。終始笑顔の岸部も「大丈夫かな、と心配になります」と表情を曇らせる。それでも気丈に揺らぐ心を抑えて、初日を何とか戦い終えた。そんな岸部を、近くで見守った上田桃子も「本当によいハートを持っているなって思います」とたたえた。

 岸部は「明日は今日よりも、1打でも良く終わりたいと思う。そして大会が終わったら、桃子さんの教え通り、少しでも飛距離を伸ばしたい」と話し、練習場へと向かった。ゴルフができるありがたみを胸に、最後まで前向きにプレーし続ける。