<男子ゴルフ:ANAオープン>◇最終日◇19日◇札幌GC輪厚C(7063ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 池田勇太(24=日清食品)が今季2勝目に男泣きした。終盤は同じ最終組のJ・チョイ(米国)とマッチレース。最終18番のパーパットを沈めて接戦を制し、7バーディー、2ボギーの67、通算14アンダー274で、通算6勝目を挙げた。あこがれの尾崎将司(63)が7勝し、ツアーの中でも最難関といわれるコース。優勝インタビューではプロでは初めてうれし涙を流した。賞金ランクは5位に浮上。昨季逃した賞金王へ、終盤のスパートを誓った。

 硬派な男が人目をはばからず涙を流した。優勝インタビュー。感想を聞かれた池田はしばらく言葉が出ない。数秒間の沈黙のあと、「本当に…うれしかった」とむせび泣きしながら声を振り絞った。「優勝して泣くのは初めてだと思うが、(開催の)輪厚コースで勝つことは本当に難しかった」と続けた。

 前半はスコアを4つ伸ばし、2打差をつけて折り返す。余裕の逃げ切りパターンと思われたが、後半に地獄が待っていた。10番で同じ最終組チョイに1打差に迫られる。12番ではバーディーを奪うも、その後はパットが決まらず、チャンスを逃し続けた。1打差のまま迎えた最終18番パー4。2メートルのバーディーチャンスにつけたチョイとは対照的に、ピン奥10メートルに外した。

 チョイがバーディーを奪えば、パーでもプレーオフにもつれる。「入れなきゃいけない。最低でも寄せてパーを取らないと」。下りの難しいラインだったが、覚悟を決め、何とか1メートルに寄せた。チョイがバーディーパットを外したため、パーパットを沈め、マッチレースに決着をつけると、脱力したように天を仰いだ。

 起伏の激しく硬い高速グリーンを持つ札幌GC輪厚C。ツアー最難関といわれるコースで強かったのが、尊敬する尾崎将だった。73年の第1回大会を制覇し、最多7度の優勝を積み重ねた。02年大会では55歳7カ月29日の最年長優勝記録も樹立。高校2年だった池田は、その場面を自宅のテレビで見ていた。「ジャンボさんが強かった輪厚で勝てた。男子ツアーの仲間入りというか、一人前になった気がする」と感慨に浸った。

 昨季は石川遼と賞金王争いを演じながら、終盤に左手首痛、腰痛に苦しみ失速した。今季は福田努トレーナー(37)を日米ツアーに帯同。トレーニングを欠かさず、ケアも万全の態勢を整える。今季は海外11戦、国内ツアー11戦と、すでに22戦に出場。昨季は計23戦だっただけに「日々の積み重ねで、逆に体調は良くなっている。この先もケガとは無縁だと思う」と自信を持つ。

 今季2勝目を挙げ、賞金ランクは12位から5位に浮上。トップの石川とは約1190万円差に迫った。インタビューの最後。池田は「秋の大会が楽しみになってきました。みなさんの期待に応える男ですから、頑張ります」とギャラリーの前で誓った。賞金王の言葉こそ出さなかったが、まぎれもなくそれは堂々の「逆転賞金王」宣言だった。【田口潤】