<男子ゴルフ:全英オープン>◇最終日◇22日◇英国・ロイヤルリザム&セントアンズGC(7086ヤード、パー70)◇賞金総額500万ポンド(約6億3740万円)優勝90万ポンド(約1億1473万円)

 アーニー・エルス(42=南アフリカ)が6打差をひっくり返す逆転Vで、10年ぶり2度目の大会制覇を成し遂げた。強風の中で前半は2ボギーだったが、後半に4バーディーを奪って68で回り、通算7アンダー273でホールアウト。首位だったアダム・スコット(32=オーストラリア)が最後に4連続ボギーで自滅し、エルスにメジャー4勝目が転がり込んだ。予選通過した日本勢では藤本佳則(22)が通算7オーバー54位、武藤俊憲(34)は通算11オーバー72位だった。

 吉報は18番の観客席を挟んだ隣のパット練習場に届いた。先に7アンダーでプレーを終えたエルスはプレーオフを想定し練習に励んでいた時、自らの逆転Vを知った。「10年ぶりにここにいる実感は数日、わかないな。クレイジー、クレイジー、クレイジーだ」と10年ぶりに手にしたトロフィーを掲げた。

 9番でボギーをたたくと、強風のために使っていなかったドライバーを手にした。「ミスすることは考えなかった」と攻め続け、無心で4バーディーを奪取してスコアを伸ばした。傷心のスコットとは親交深く「オレも同じ経験をしたし立ち直れると伝えた。彼は若い。次の10年でオレ以上に勝てるさ」と気遣った。

 今季序盤、世界ランク50位から外れたエルスは94年から18年連続で続けていたマスターズ出場を逃した。直後にボーイング社と契約を結び、心機一転で臨んだメジャー舞台だった。05年に左膝靱帯(じんたい)損傷で長期離脱。08年には長男ベン君が自閉症と診断されたと公表し、自閉症研究のための基金を設立。「心の中でベンと一緒にパットを決めた。彼が見ていることを知っていたから。喜んでいるはず」とエルス。42歳のベテランは、感無量の表情を浮かべた。【藤中栄二】

 ◆アーニー・エルス

 1969年10月17日、南アフリカ生まれ。9歳でゴルフを始め、89年にプロ転向。94年ドバイ・デザート・クラシックで初優勝。メジャーは94、97年全米オープン、02年全英オープンを制覇。家族はリージー夫人と1男1女。189センチ、95キロ。<メジャーの逆転V>

 ◆史上最大差は10打差

 99年全英オープンでポール・ローリーが10打差から逆転している。最終日18番でトリプルボギーをたたいたジャン・バンドベルド、ジャスティン・レナードとのプレーオフを制した。

 ◆ノーマンの悲劇

 96年マスターズで悲願の初優勝を狙ったグレグ・ノーマンは、最終日に78と大崩れ。6打差2位から出た同じ最終組のニック・ファルドに逆転負けした。

 ◆4大会連続で逆転勝ち

 メジャーでは昨年の全米プロでキーガン・ブラドリーが最終日に1打差3位から逆転して以降「逆転王者」が続いている。今年はマスターズでバッバ・ワトソンが3打差4位から、全米オープンでウェブ・シンプソンが4打差8位からひっくり返した。