<男子ゴルフ・パナソニックオープン>◇最終日◇29日◇大阪・茨木CC西コース(7328ヤード、パー71)◇賞金総額1億5000万円(優勝3000万円)

 ゴルフ界も「マーくん」だ。首位に2打差2位で出た川村昌弘(20=マクロミル)が、17、18番を連続バーディーで締めくくり、67の好スコアをマーク、通算9アンダーでツアー2年目で初優勝した。20歳3カ月4日での初Vはツアー史上5番目の年少記録。待望の個性派プロが台頭した。15番まで同10アンダーだったS・J・パク(27)は16、17番の連続ボギーが響き、同8アンダーで2位に終わった。

 川村が獲物を狙う“黒ヒョウ”になったのは、インに入ってからだった。キャップからパンツまで、すべて黒ずくめ。「いい位置にいる最終日の勝負服です。何にも染まらない黒は好きですね」。

 かついで3週目になる小岸秀行キャディー(40)は「バックナインは全然違った。すごかった」と驚いた。10番4メートル、13番50センチ、15番で2メートルを入れて、着々と通算7アンダーまで上げていく。「マーくん、頑張って」とギャラリーから声が掛かると、気合は最高潮に達した。

 しかし、ツアー2年目の川村は、これまで優勝争いするたびに、空回りして崩れた“経験則”があった。だから、小岸キャディーと「このコースは井上誠一さんの設計。うまく造ってある」などと好きなコース設計の話をしながら、リラックスした。打つ時だけ集中した。それでも、17番パー3の第1打も、18番パー5の第2打もともに20度のユーティリティーで打ったが、「右から軽いドローで打ちます」とあえて口にすることで気持ちをほぐした。

 ラウンド中のオンとオフの切り替えがうまくいく。17番3メートル、18番は8メートルに2オンして連続バーディー。通算9アンダーとし、最終組を待った。入ればプレーオフとなる18番のパットをS・J・パクが外し、川村が逆転で栄冠を手に入れた。

 今大会は毎日、三重・四日市市から1人息子を応援に来た母那緒美さん(47)は号泣し、父昌之さん(47、自営業)も「こんなに早く優勝が…」と感激した。川村は「副賞のマッサージチェアがうれしい」と笑わせた。

 5歳から始めたゴルフ。三重・亀山GCで腕を磨いた。小学4年生で「川村昌弘です」とペコリと頭を下げ、初対面の大人と交じってプレーした。度胸満点で、多彩なショットを操る弱冠20歳の“和製ゲーリー・プレーヤー”。新たなスター候補が誕生した。【町野直人】

 ◆川村昌弘(かわむら・まさひろ)1993年(平5)6月25日、三重・四日市市生まれ。福井工大福井高出身。11年にツアー最終予選会(QT)に合格し、プロ入り。昨年からツアー参戦。いきなり2戦目のつるやオープンで3位に入り、注目を浴び、安定したプレーを続け、賞金ランクは約3420万円獲得し32位に入った。今回の優勝で今季は約3960万円で賞金ランク7位までアップしてきた。172センチ、72キロ。

 ◆ゲーリー・プレーヤー

 南アフリカ出身のプロゴルファー。メジャー大会通算9勝で、マスターズ、全英オープン、全米オープン、全米プロの4大メジャーを制したグランドスラマー。小さな体をいっぱいに使ったスイングで、全身黒ずくめのウエアを好み、「南アの黒ヒョウ」といわれた。ゴルフ界を代表する偉人の1人。77歳。