2度目出場の宇野昌磨(19=中京大)が、2位で初の表彰台に立った。ショートプログラム(SP)2位で臨んだフリーは4本の4回転ジャンプに成功。演技構成点も5項目すべてを9点台でそろえた。フリー世界歴代3位の214・45点、合計でも羽生に次ぐ世界歴代2位の319・31点をマーク。平昌五輪での日本勢ワンツーフィニッシュが現実味を帯びてきた。日本男子は五輪で最大の出場枠3を獲得した。

 フィニッシュの瞬間、左拳を突き上げ、右手を腰に当てた。宇野史上最高の演技にして、最高の表情。「落ち着いて楽しく滑れた。世界選手権を深く味わえた」と満足そうに言った。

 冒頭の4回転ループを着氷させて勢いをつけ、4回転フリップへとつなげた。続く3回転ルッツでバランスを崩したがその後に響かせることもなく滑りきった。フリー214・45点、合計313・31はもちろん自己ベスト。表彰式では銀メダルを下げ、羽生の隣で笑顔を見せた。

 「2度目の過ちを犯したくなかった」。初出場だった昨年の世界選手権では7位に沈んだが、あの悔しさがなければ今季の大躍進はなかったと確信している。失意のままに帰国した後、「気分転換のために」と取り組んだのが4回転フリップ。すると初日の練習でいきなり着氷し、2週間後のチーム・チャレンジカップで世界で初めて試合で成功させ、歴史に名を刻んだ。

 成長はその後も続き、今年2月の4大陸選手権では、1年以上かけて磨いてきた4回転ループを初成功。この1年で、トーループ1種類のみだった4回転ジャンプを3種類持つ選手へと変貌を遂げ、得点の大幅増へつなげた。ジュニア時代は3回転半(トリプルアクセル)の習得に5年を要するほどジャンプを苦手としていたが、昨季から取り組む体幹強化が奏功。現在は4回転サルコーにも取り組んでおり、来季は4種類の4回転を備えることも視野に入れている。樋口美穂子コーチが「感覚人間」と評する通り、思わぬきっかけで新しい技を覚えてきた勢いは、10カ月後の五輪まで続きそうだ。

 会見では「今できる100%は出せたが、100点ではない」と言った。その言葉が示す通り、羽生とはわずか2・28点差で、3回転ルッツのミスがなければ金メダルも射程内だった。北欧フィンランドの地でとてつもなく大きな成果と可能性を、19歳はつかみ取った。【矢内由美子】