ノルディックスキー複合五輪金メダリストの荻原健司氏(40)が、今季から北野建設のスキー部監督に就任することが4日、分かった。現役引退後は参院議員を務めてきたが、今夏の参院選に出馬せず、政界から引退。現場での指導に意欲を見せていたが、名門スキー部のポストに就くことになった。02年以来、8年ぶりのスキー界への復帰で、本格的に指導者の道を歩み始めていく。

 かつて「キング・オブ・スキー」とうたわれた男が8年ぶりにスキー界に帰ってくる。荻原氏の「復帰舞台」は現役時代に所属した愛着ある名門スキー部だった。すでに関係者へ、監督就任のあいさつ回りも行っており、選手がトレーニングを行う長野・白馬にも姿を見せて「厳しく指導していくよ」と声を掛けているという。

 恩師の後を継ぐことになった。同部監督は、98年長野五輪などでジャンプ日本代表ヘッドコーチを務めた小野学氏が務めてきたが、7月3日に呼吸器不全で死去した。荻原氏は同16日にお別れの会に出席。「小野さんの情熱をしっかり引き継いで、後進の指導にあたり、スキー界の発展に尽くしたい」。長年、指導を受けた小野氏への感謝を口にすると同時に、復帰への決意を口にしていた。

 現役時代は歴史的な快挙を達成し、一時代を築いた。日本複合のエースとして、92年アルベールビル、94年リレハンメルの冬季五輪2大会連続で団体金メダル獲得に貢献。世界選手権も含めると計6個の金メダルを獲得した。W杯でも世界初となる個人総合3連覇。早期にV字ジャンプを導入するなど革新的でもあり、現役晩年は勝てない時期もあって苦労も肌で知るなど、経験は豊富だ。

 北野建設スキー部には現在、複合選手は所属していないが、モーグルの上村愛子、伊藤みき、ジャンプの竹内拓と五輪選手も多数在籍。競技は違うが、世界一にまで上り詰めた経験や精神力など、荻原氏が注入できる部分は大きい。

 2月のバンクーバー五輪ではフィギュア、スピードスケートのスケート勢がメダルラッシュに沸く中、スキー勢は低迷し、メダルゼロに終わった。スポンサー離れが進み、スキー連盟も会長選を巡って混乱するなど暗い話題が多かった中で、荻原氏の現場復帰は久々の光明。将来的には複合日本代表での指導も期待される。「キング・オブ・スキー」が政界から再び舞い戻ってきた銀世界で力を発揮する。