<フィギュアスケート:全日本選手権>◇最終日◇26日◇長野・ビッグハット

 女子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)で2位だった安藤美姫(23=トヨタ自動車)がSP1位の浅田真央(20)を抜き、逆転優勝した。

 思わず安藤の感情がほとばしった。演技終了後、両手を何度も振り下ろし、会心のガッツポーズ。右足でも氷を蹴るほど、うれしさを全身で訴えた。「うれしくて覚えていない」という興奮の様子を、会場のモニターで見て「恥ずかしい」。最高のミキティ・スマイルがはじけた。

 今季はフリーで負けなし。GP2戦はSPで崩れながら、フリー1位で逆転優勝。GPファイナルでも総合5位ながら、フリーはトップだった。その自信が、この日の完璧な演技につながった。各要素の完成度を表す出来栄え点(GOE)で、すべてプラスの評価を得た。6年ぶり3度目の全日本タイトルだ。

 この夏、モロゾフ・コーチとともに拠点を米国からモスクワに移した。しかし練習場を確保できず。8月の山火事もあり、再びラトビアの小さな街に移り住む想定外の出来事もあった。それでも「今季は楽しみながら挑戦したい」と、笑顔を忘れなかった。

 フリーの137・58点と合計202・34点は、国際スケート連盟(ISU)非公認大会だが、今季“世界最高”得点だ。しかし、安藤は「結果や点数より演技の満足度が大事。この日は二重丸をあげてもいい」。大人の女性へ成長し、3月の世界選手権で再び女王復活を狙う。【吉松忠弘】