世界水泳選手権で27日、男子100メートル平泳ぎのブレントン・リカード(オーストラリア)が北島康介(日本コカ・コーラ)の58秒91を更新する58秒58の世界新記録で初優勝した。年内に競技復帰を予定している北島にとって強敵となりそうだ。

 25歳のリカードは大舞台での個人種目は初制覇だが、決して無名ではない。北京五輪の200メートルは銀メダルで、2年前の前回世界選手権も100メートルは3位、200メートルは北島に競り負けて2位。北島を育てた平井伯昌コーチは、優勝候補の1人とみていた。

 後半の追い上げが持ち味。決勝は前半の50メートルで27秒67の5番手と出遅れながら巻き返した。195センチ、91キロの大型スイマーは「これくらいのタイムを出す準備はしてきた。自分の力を出し切れた」と胸を張った。

 テレビ中継の仕事で会場に訪れていた北島は「違う次元と思った」。しかし、リカードが着た全面ポリウレタンの新型高速水着は来年以降は許可されない見通しで、完全に追い抜かれたとは感じていないだろう。「知らないところで(記録を)破られるより、目の前でやられて良かった」と北島。ロンドン五輪に向けた動機づけを探す中で、闘志に火が付いたかもしれない。(共同)