<水泳世界選手権:競泳>◇2日◇イタリア・ローマ

 【ローマ=高田文太】競泳男子50メートル背泳ぎ決勝で、古賀淳也(22=スウィン埼玉)が24秒24の日本新記録をマークし、銀メダルメダルを獲得した。同100メートル金メダルに続く、今大会2度目の表彰台。日本人選手が世界選手権1大会で、金メダルを含む複数メダルを獲得するのは、03、07年の北島康介以来、2人目の快挙となった。大会を通じて大一番の勝負強さは圧巻。亡くなった古橋広之進さん(享年80)に由来する、日本代表の新ニックネーム「トビウオジャパン」の新エース候補へと躍り出た。リアーム・タンコック(英国)が24秒04の世界新記録で優勝した。

 100メートルの金メダルが、まぐれではないことを証明した。得意のバサロキックで飛び出した古賀は、ゴールまで一気に泳ぎ切った。惜しくも北島以来となる2冠は逃したが銀メダル。世界トップレベルのスプリント力を見せつけた形だ。

 得意の50メートルで、メダルは譲れない思いがあった。大会前の世界ランクは1位。自身の日本記録を更新する24秒29をマークした1日の準決勝後は「初めから50メートルはメダルを取るつもりで来た。それが何色になるか、記録がどうなるか」と、表彰台に立っていない姿が想像できないほど、前向きな精神状態で臨んでいた。この種目を苦手とする入江について問われると「さすがに差がつくと思う」と、プライドをのぞかせていた。

 88年ソウル五輪100メートル背泳ぎ金メダルの鈴木大地氏を育てた鈴木陽二コーチは「古賀は大地と同じ前輪駆動型の泳ぎをする」と話し、天性のスプリンターと評価する。前輪駆動とは、ストロークで入水した直後の、伸ばした腕を肩の下辺りまで回してくるまでの、水をつかむ能力とパワーにすぐれているということ。逆に「入江は後輪駆動型」(鈴木コーチ)と、肩から腰の辺りにかけて腕を押し出す能力にすぐれ、長い距離向きの泳ぎと説明した。

 前輪駆動の泳ぎを可能にしていたのが、2メートルを超えるリーチの長さだ。両手を広げたリーチは、一般的に身長と同程度とされるが、古賀は181センチの身長よりも20センチほど長い。ひとかきで人よりも長い距離を水中で振り回すため、つかむ水の量が増して速さにつながっていた。さらに昨年からスタート時に、しりの高さを上げて角度をつけて飛び込む練習をし、今年3月ごろから得意のバサロキックにつなげられるようになった。

 大一番を約5時間半後に控えた緊急ミーティングで、古橋名誉会長の悲報を知った。自身の100メートル金メダルを喜んでいたことも聞いていた。偉大な故人に2つ目メダルをささげた。