<大相撲夏場所>◇初日◇11日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(27=高砂)が、小結稀勢の里(21)に力負けした。立ち合いの張り差しに失敗し、つけ込まれて、押し倒された。頑丈なはずの腰がくだけ、尻もちをつく屈辱的な黒星。昨年名古屋場所千秋楽以来、東から土俵に上がった最強横綱は、珍しくショックの色をにじませた。ライバルの横綱白鵬(23)は、小結朝赤龍(26)の動きを見極めてはたき込んだ。

 最強横綱が、尻もちをついた。無意識に舌を出し、首をひねる。立ち上がろうとした時、観客の投げた座布団が顔に直撃したが、怒らない。目はうつろなままだ。得意の張り差しで墓穴を堀った。右の張りはあごを引いた稀勢の里にきかず、左腕を差し込まれ、右上手も与えた。苦し紛れの小手投げをうつも、軸にした左足の踏ん張りがきかず、腰から崩れ落ちた。

 支度部屋に戻ると、風呂場に20分もこもり、髪を洗った。両国国技館を後にしていた個人トレーナーを呼び戻し、「腰が痛い」と訴えた。取組前、同トレーナーは「足も腰も少々、痛くても強いから大丈夫だよ」と話していたが、本人は抱えた故障が敗因と考えようした。だが、風呂から上がると、ポツリ、ポツリと本音を漏らした。

 朝青龍

 迷い。いや、中途半端だった。立ち合いはまあまあだったけど、勝負へのこだわりというか…。負け方がよくないよ。

 春場所13日目の琴光喜戦に痛め、完治していない左ふくらはぎ痛の影響をたずねる質問には「うん」とうなずいた。そして4分間の沈黙を経て、突然「スクワットをやらないとな」とつぶやく。「腰は大丈夫だけど、はり(治療)に行くよ。でも、おかしいな。あんなことなかったのに」と漏らした姿からは、いつもの闘争心や殺気は伝わってこなかった。

 取組前から明らかに異変が起きていた。「力の抜けない相手」と実力を認めてきた稀勢の里との一番には、これまでは支度部屋から顔を紅潮させ、気合満点で土俵に上がっていた。しかし、この日は淡々と過ごし、花道に向かう直前も時天空と談笑していた。

 昨年春場所以降、八百長騒動や出場停止からの復帰、「死ね」発言など騒々しい場所前が続き、逆にそれらをバネにしてきた。しかし、今場所前は平穏に初日を迎えた。油断なのか、衰えなのか。2日目の把瑠都戦で、その答えがみつかりそうだ。【柳田通斉】