<大相撲夏場所>◇2日目◇12日◇東京・両国国技館
横綱朝青龍(27=高砂)が、「原点」に戻って連敗を阻止した。巨漢の西前頭筆頭把瑠都(23)の胸に頭をつけ、中に潜り込んでの下手ひねり。初日、小結稀勢の里(21)に喫した黒星の悔しさを、小柄だった高校時代に身に付けた相撲で晴らし、2場所連続優勝への1歩を踏み出した。ライバルの横綱白鵬(23)は黒海(27)を危なげなく寄り切って連勝。稀勢の里は、大関千代大海(31)に押し出された。
なりふり構わず、頭をつけた。絶対に負けられない一番。朝青龍は、身長で12センチ上回る把瑠都(197センチ)の中に潜り、左前みつをひいた。棒立ちになる相手の左足に右手で内無双を切ろうとしたが空振り。すぐに頭を切り替え、右上手をつかむと同時の下手ひねり。175キロの巨体を浮き上がらせ、土俵に尻もちをつかせた。
朝青龍
相手は大きいから、上半身より下半身で相撲を取ろうと思った。胸を合わせればとんでもない力を出すから、自分のペースで相撲を取りたかった。内無双がダメなら、別のことをやればいいんだから。
前日は稀勢の里に圧倒され、背中に土をつけられた。立ち合いで上体が高くなった上での圧力負けだった。この日の相手も、06年秋場所横審けいこ総見で4連敗させられたエストニアの怪人。横綱として連敗は許されない状況で見せた原点回帰の相撲は、北の湖理事長をも「これこそ朝青龍。新入幕から上がってきたころの相撲だ」とうならせた。
原点回帰は、場所直前の行動にも表れていた。初日前日の10日。朝青龍は、高校相撲の強豪、埼玉栄高相撲部のけいこ場に足を運んでいた。山田道紀監督によれば、約1時間、高校生の熱のこもったけいこを見つめた横綱は「いいものを見せてもらいました。自分も高校(高知・明徳義塾高)から相撲を始めたので、気持ちが新たになりました。ここに来て良かった。ありがとう」とあいさつし、12人の部員にエールを送ったという。
卓越したスピードとパワーで7場所連続優勝、年間最多84勝など数々の記録を打ち立ててきた。だが、今は白鵬というライバルも出現し、無敵の存在ではなくなった。それは本人も自覚して「もう、年かな」と苦笑することもある。だからこそ、体重80キロで相撲を始めたころの気持ちに戻って頭をつけた最強横綱。その負けじ魂は、まだまだ健在のようだ。【柳田通斉】

