<大相撲夏場所>◇12日目◇22日◇両国国技館
大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)が横綱白鵬(23)を寄り切って全勝を守り、初優勝へ大きく前進した。立ち合いに狙い通りに左上手を取って自分の形をつくる完勝。前日の朝青龍に続く横綱連破で、23日に平幕安美錦(29)に勝ち、兄弟子の大関琴光喜(32)が白鵬を破れば、初優勝が決まる。06年春場所から優勝はモンゴル勢が独占してきたが、それを止める「欧州勢初優勝」を目指す。
作戦通りだった。相手に頭で当たった琴欧洲は、すかさず左へ動いた。長い手を伸ばして左上手をつかむと、右下手も取った。あとは、まわしを引きつけながら一気に前に出るだけ。「先に自分が左上手を取ることだけを考えた。相手は横綱。自分の形をつくらないと」。完勝だった。「すごくうれしい。言葉にならないぐらい」。
花道では、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)からの祝福を受けた。春場所休場後、一緒に取り組んだ特訓が花開いた。増量と下半身強化。親方は「白鵬のような相撲を取らせたいんだ」と話していた。腰をどっしり落とし、はたきや左右の動きにも動じない相撲のモデルは白鵬だった。その相手との直接対決を制し、早くも手本を超えた。
1場所で2横綱に勝つのは初めて。06年春場所から朝青龍と白鵬が優勝を独占する「モンゴル時代」に待ったをかけることが秒読みに入った。「ブルガリア人は、チンギスハンのヨーロッパ侵攻を止めたんだよ」と琴欧洲。13世紀にユーラシア大陸の大部分を支配したモンゴル帝国の西方遠征の際、ブルガリアは中央アジアの国々を根こそぎ滅ぼした騎馬軍団に激しく抵抗。1度は撤退させ、欧州進出を阻んだ史実はブルガリアの誇りだ。日本で働くブルガリア人で、琴欧洲の応援者でもあるカリン・コズロフさんは「ブルガリア人はみんな知っています。琴欧洲関の活躍も似ていますね」と誇らしげだ。
「朝青龍関に勝ったことが自信になった。今日は昨日ほど緊張しなかった」。この日の勝利もまた、大きな手応えになったはずだ。北の湖理事長(元横綱)は「体格を生かした相撲。優勝が見えてくる大きな1勝だ。ここまできたら、相手が負けるのを待たず、自分で勝ってつかみ取って欲しい」と期待した。
琴欧洲も分かっている。13日目の優勝の可能性について「相手が負けるのを待っても仕方がない」と素っ気なく話した。05年秋場所で12連勝後に2連敗して優勝決定戦に持ち込まれ、朝青龍に屈した時とはもう違う。必ず自力で優勝を奪い取る気だ。【来田岳彦】

