<大相撲夏場所>◇13日目◇23日◇東京・両国国技館
大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)が自力で初優勝をつかむ。平幕安美錦(29)戦は立ち合いに迷いが出て、あっけなく押し出され、初黒星を喫した。だが直後に兄弟子の大関琴光喜が、2敗で追っていた横綱白鵬を撃破し援護。14日目の安馬戦に勝てば、初優勝が決まる。
琴欧洲から横綱を連破した立ち合いの落ち着きが消えた。待った、安美錦の突っかけ後の3度目で立ったが鋭さはない。相手の圧力をまともに受け、2秒8で押し出された。ぼうぜんと花道を引き揚げ、支度部屋でもなかなか口を開かない。「今日は今日。明日は明日」と絞り出すのが精いっぱいだった。
横綱に連勝した達成感が気持ちにスキをつくった。千葉県松戸市の佐渡ケ嶽部屋での朝げいこでも、前日までの鋭い目が消えていた。「ぼーっとしているから、目で『(けいこを)やれ』って合図した。リラックスした様子が怖いと思ったんだ」と話していた親方の予感が的中してしまった。
先場所までの弱気が顔をのぞかせたとき、救ってくれたのは兄弟子の琴光喜だった。白鵬に力強い寄り倒しで黒星をつけてくれた。「立ち合いに、あれだけ長くかけたってことは、迷いがあったんだろう。自分の経験でも優勝争い中は眠れなくなる。何も言わない方がいいこともあるんだ」と琴光喜。言葉の代わりに行動で援護した。帰り支度しながらテレビを見ていた琴欧洲の顔にかすかな笑みが戻った。
駐車場への通路では、待ちかまえていた親方に呼び止められた。「(立ち合いで)変わってくると少し思った」と弱気になって、余裕を失ったことを率直に告げた。親方からは「1番負けたぐらいでくよくよするな。こういう場面は、これからどんどん出てくるから鍛えていかないと」と前向きなアドバイスを受けた。
02年8月、言葉も分からないまま佐渡ケ嶽部屋に飛び込んだ。ともに激しいけいこを積み、同じ釜の飯を食ってきた“家族”からの「優勝してほしい」というメッセージを肌で感じた。最後は「自分で勝つこと以外ない」と言葉に力強さを取り戻した。連日の伊勢ケ浜勢との対戦となる安馬をたたきつぶし、自らの力で賜杯を手にする。【来田岳彦】

