<大相撲名古屋場所>◇3日目◇15日◇愛知県体育館

 大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)の綱とりが、わずか3日で消滅した。苦手の豊ノ島(25)のすくい投げに屈し、早くも2敗目。14勝1敗の優勝という最低ラインをクリアすることが不可能となった。精神面の弱さが、課題としてあらためて露呈した。

 VTRのような敗北だった。潜り込んできた豊ノ島にもろ差しにされると、琴欧洲はすくい投げにゆっくりと土俵に落ちていった。綱とり消滅とともに、格下相手に同じようなパターンで4連敗したショックから、支度部屋では何を聞かれても目を閉じたまま無言。負けても前向きにコメントした初日から、精神的にもろい春場所までの琴欧洲に戻ってしまった。

 佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)が悔やむ。「上手を取ろうとして、かぶさってしまった。その中で前に出ればいいのに、左足が下がってしまったのがよくなかった」。琴欧洲は取組前から冷静さを失っていた。幕内前半戦終了後、テレビ中継が自分の解説を流し始めると、落ち着かない様子でテレビ前まで行ってチェック。土俵に向かう際も、番付が下の豊ノ島が入るのを待って動くところを、自分が先に入ってしまった。

 北の湖理事長(元横綱)は「残りが大事。次の場所につなげるためにも、自信を持って成績を残してほしい」と事実上、今場所の綱とり消滅を告げた。土俵入りの際に「差されてもいいから、上手を取りに行け」とアドバイスをした横綱朝青龍も「同じ形で下の者に負けるのは、上の者として恥ずかしいよね」と突き放した。

 琴欧洲は場所前、番付発表後の会見で綱とりの質問を避け、イベントでは親方に綱とりの話題を避けてもらうよう参加者に呼びかけてもらった。だが、横綱はさまざまな重圧の中で、常に12、13勝を期待される地位。親方の「もともと綱とりは考えていなかった」という言葉は、琴欧洲の現状を冷静に判断していたものにも思える。次のチャンスをつかむためにも、残り12日で精神的タフさを養っていくしかない。【来田岳彦】