横綱朝青龍(28=高砂)が、法廷でブチ切れた。3日、週刊現代の八百長疑惑記事をめぐり、日本相撲協会と朝青龍ら力士が、発行元の講談社などに名誉棄損で損害賠償と謝罪広告を求めた訴訟の口頭弁論が東京地方裁判所で行われ、原告側証人として朝青龍が現役横綱として異例の出廷。八百長疑惑は「ありません」と否定したが、「けいこ不足」を指摘されると「答える必要はない」と激怒。その他にも「そんなもんだ」「だろうな」と不機嫌に答え、被告側代理人の弁護士に「あなたは相撲を取っていますか」と威圧するなど“らしさ”をみせた。

 朝青龍が、法廷で声を荒らげた。「それは裁判に関係ない。答える必要はない」。被告側代理人の弁護士から「けいこ不足との報道がありますが?」と問われた途端、マユをひそめ、にらみをきかせて言い放った。「何であなたに答える必要があるんだ」。たじろぎながらも同弁護士が「八百長で楽して勝つことを覚えたから、けいこをしなくなったのでは?」と続けると、「大間違いです」とむきになって反論した。

 笑って、怒って、威圧して。朝青龍は法廷でも、普段のままだった。午後2時12分、東京地裁で最も広い103号大法廷に登場した。まげを整え、紋付き羽織はかま姿の正装。98席を埋めた傍聴者に向けてニコリと笑ってみせた。裁判所も直前に1人掛けのいすを「朝青龍仕様」の長いすに変更。それにどっかりと座った朝青龍は、八百長疑惑については「ありません」「ウソです」などと短い言葉でテンポよく答えていた。八百長という言葉についても「週刊現代の報道で初めて知った」。八百長の隠語として使われる「注射」についても「聞いたことありません」と返した。

 しかし、尋問時間が30分を過ぎるといらつき始め、返答は投げやりに。横綱昇進の時期と問われても「分からない」「そんなもんだよ」。意識していた「です、ます」調を忘れ、被告側から、八百長疑惑の具体的内容や仲介者ら人物についての質問が続くと「知らない」。反対尋問で2人目の被告側弁護士が質問を始めると「あなた誰?」と問う場面もあった。

 投げやりな返答には、信じ難いものもあった。懸賞金などの使い道や管理について聞かれると「モンゴルに自分で送金している」と答え、毎日、銀行に行っているかと聞かれると「はい」を繰り返した。また、懸賞本数の確認法を中村也寸志裁判長に問われると「スポーツ新聞に載っているじゃないですか。知らないんですか」と言い、首をひねってみせた。

 イライラぶりは、態度でも示した。同誌が報じた06年九州場所千秋楽千代大海戦での疑惑について、被告側は千代大海が簡単に土俵を割ったことを例に追及を始めると、右手の人さし指を上に向けながら「あなたは相撲を取ってますか?」と逆質問。「(相撲を)見る目がない。残念ですね。いつでも真剣勝負なのに」と吐き捨てるように言った。

 午後3時3分に、全尋問が終了すると、拍子抜けしたのか「あれ、もう終わったの?」とつぶやいた。いすから立つと再び傍聴席に向けてニッコリ。あごをひいて目を細めながら、退廷した。約50分の朝青龍劇IN大法廷はここで終了。車で両国国技館に戻ると報道陣を前に「(裁判所で)全部放り出した(はき出したの意味)。ちゃんと答えた。あとは弁護士に任せた。以上、終わり」と言い、再び車に乗り込んだ。【柳田通斉】