<大相撲九州場所>◇千秋楽◇23日◇福岡国際センター
横綱白鵬(23=宮城野)が13勝2敗で並んだ関脇安馬(24=伊勢ケ浜)との優勝決定戦を制し、自身2度目の3連覇で9度目の優勝を飾った。1分25秒2の大相撲で、最後は頭を押さえつけて左上手投げ。大関昇進を事実上決めた安馬をねじ伏せ「主役はオレだ」と見せつけた。横綱昇進から9場所で6度優勝の安定感だ。初優勝こそ逃した安馬だが、26日の番付編成会議と理事会を経て、正式に大関となる。
白鵬の意地に火が付いた。足から土俵に根を張っているかのように踏ん張るのは、絶対に負けたくない安馬。12日目に屈辱の敗北を味わわされた記憶がよみがえった。右手で頭を押さえつけると、左で引きちぎるような強引な投げ。安馬は土俵上に転がった。
支度部屋でも呼吸は荒いまま。「2度続けて負けられない。その一心だった」と話すのが精いっぱい。「明日は死んでるかもしれない」と死力を尽くした1分25秒2だった。横綱昇進後、ライバル朝青龍が休場した場所はすべて優勝している。「横綱は優勝して当たり前」という強い気持ちが安馬の勢いを上回った。
相手が安馬だからできた死闘だった。初土俵は安馬から1場所遅れの01年春場所とほぼ同じ。86キロの細身だったとはいえ選抜試験を突破して来日した相手に対し、白鵬は来日してもスカウトしてくれる部屋がなくモンゴルに帰国する寸前で拾われた。「安馬には負けたくない」という気持ちで立場を逆転させた。
モンゴル出身のパイオニアの旭天鵬は「アイツらはプライベートの仲もよくも悪くもない。ライバルとしていい距離感を保っている」とライバルの存在の大きさを語った。
安馬にはない心の支えもあった。妻と子どもたちだ。1歳半の長女愛美羽(あみう)ちゃんが「パパ、頑張ってね」と話す携帯電話のムービーを見て癒やされた。初日黒星の翌日、9月に生まれた長男真羽人(まはと)君が初めて寝返りを打った。紗代子夫人は「『息子が頑張ってるんだから、オレも頑張らなきゃ』と喜んでいました」と笑う。安馬に敗れた翌日の13日目からは福岡入りし、取組後から午後10時までは家族で過ごした。
9度目の優勝は不知火型土俵入りの横綱では明治時代の太刀山に並ぶトップ。「不知火型は短命」というジンクスに昇進時は雲竜型と悩んだが、宮城野部屋の先輩横綱吉葉山の土俵入りを受け継いだ。「悪い話は聞いたけど、それを覆さないとね」とジンクスも打ち破ろうとしている。2年連続で年4度の優勝を果たしたのは千代の富士、貴乃花、朝青龍に続き4人目。3連覇を2度達成したのも9人目だ。場所ごとに「白鵬時代」を歴史に刻み続ける。【来田岳彦】

