<大相撲初場所>◇13日目◇23日◇東京・両国国技館
横綱朝青龍(28=高砂)が「師弟のきずな」で復活優勝にあと1歩にこぎつけた。大関千代大海(32)をすくい投げで退け、06年九州場所以来の13連勝とした。14日目に1差で追う横綱白鵬(23)が敗れ、朝青龍が勝てば23回目の優勝が決まる。場所前に師匠高砂親方(元大関朝潮)の「10勝すればいいんだ」の進言で、気が楽になったことが、快進撃の原動力になっている。今場所は打ち出し後に必ず師匠にあいさつに出向くなど、師弟関係の原点に立ち返って、一番一番に集中している。
乗っている朝青龍が「横綱相撲」をみせた。先手の速攻相撲が持ち味だが、千代大海の突きとのど輪をあえて受け、左を差した。右にひねってのど輪をかいくぐると、すぐに右を差した。体を密着させて相手の足を浮き上がらせた瞬間に右からのすくい投げ。いつも以上に胸を張って、勝ち名乗りを受けた。
初日から13連勝は、06年九州場所以来の快進撃。過去のデータでは、13連勝した6場所すべてに優勝。うち5場所は全勝優勝だが、本人は淡々としていた。
--13連勝ですが
朝青龍
普通だよ。
--白鵬の結果次第では14日目に優勝が決まります
朝青龍
気にしない。
もっとも支度部屋は優勝したような騒ぎだった。元テニス選手の松岡修造氏、民主党の石井一参院議員ら約30人が朝青龍を激励。琴欧洲は「まるで千秋楽で優勝が決まったみたい」と表現した。朝青龍も笑顔で対応したが、国技館を出ると高砂部屋に戻り、師匠にあいさつに出向いた。
かつては国技館から夜の街に繰り出すことも少なくなかったが、今場所は必ず部屋に戻って、ビデオで動きを確認。その後に近所の飲食店にいる高砂親方を探して「おかげさまで勝てました」と頭を下げている。同親方は「オレは『おう。明日も集中していけよ』と返すだけの、わずかなやりとりだよ」と話した。
以前は「会話がない師弟」と伝えられたが、最近は2人の関係も変化してきた。けいこ始めの3日には進退問題の重圧を抱える朝青龍に同親方が「10番勝てばいいんだぞ。気楽にいけ」と激励。朝青龍は周囲に「うれしかった。少し気が楽になった」と話し、親心のこもった金言に感謝していたという。
本人は賜杯に向けては無心を強調している。場所直後恒例の予定は帰国も含め、関係者は「何も言われていない」という。一方で高砂親方は「白鵬との千秋楽決戦になるだろう。大事なのは気持ちと体調管理。帰国については公式行事参加に支障がなければいい」と話した。夜遊びを封印した弟子が、師匠の思いも胸に残り2番に集中する。【柳田通斉】

