<大相撲秋場所>◇3日日◇15日◇東京・両国国技館

 大関日馬富士(25=伊勢ケ浜)が因縁の相手にリベンジした。名古屋場所3日目に完敗し、綱とり失敗の起因となった関脇琴奨菊(25)を一気に攻めて立てて、最後は相手がつきひざ。過去7勝15敗だった苦手を下して、連敗を阻止した。横綱朝青龍(28)は注文相撲で西前頭筆頭雅山(32)を引き落とし、初日から3連勝。横綱白鵬(24)や、琴欧洲(26)と琴光喜(33)の佐渡ケ嶽部屋の大関も無傷の3連勝となった。

 大関の意地があった。日馬富士は最後の仕切りで、琴奨菊を強くにらみつけた。過去の対戦成績は7勝15敗。あいくちは悪いが、気持ちで負けるわけにはいかない。「立ち合いだけはしっかりとね」。出足良くもろ差しになり、一気に土俵際まで寄り立てた。必死に回り込もうとした琴奨菊が、左ひざから崩れ落ちる。かけ続けた圧力が、連敗を阻止した。

 頭の中には、屈辱の記憶しかなかった。「先場所、あんな負け方したんでね。今場所はしっかり当たろうと思った」。綱とりだった名古屋場所。連勝発進した勢いは3日目、琴奨菊に止められた。激しく頭でぶつかったが立ち遅れ、わずか2秒2で寄り切られた。「初めてだからね。立ち合い負けして1発で持っていかれたのは」。ショックを引きずり、5日目に2敗目。綱とりは失敗した。

 精神面の弱さを指摘された。苦手をなくすには、けいこしかない。場所前の2日には、東京・江東区の部屋から約20キロ離れた千葉・松戸の佐渡ケ嶽部屋まで足を運んだ。琴奨菊とは17番取って14勝。「けいこもしてるんでね」と心の余裕をつくった。かつて大関昇進を争った「ライバル」でも、今は番付が違う。下位に苦手意識があっては、横綱にはつながらない。

 支度部屋で擦れ違った白鵬とは、お互い視線を送らなかった。年間最多勝記録更新ペースで強さを見せつける横綱に、今年2勝している(優勝決定戦含む)のは日馬富士だけだ。「1日1番、自分の相撲を取るだけです」。今場所優勝すれば、来場所再び、綱とりへ道が開ける。日馬富士に、立ち止まっている暇はない。【近間康隆】