角界の不祥事続発が、間近に迫った名古屋場所(7月11日初日、愛知県体育館)の中止危機にまで発展した。日本相撲協会生活指導部の陸奥部長(元大関霧島)らが16日、監督官庁である都内の文部科学省を訪問。野球賭博への関与を認めた大関琴光喜(34=佐渡ケ嶽)の名古屋場所出場辞退などを報告した。対応したスポーツ・青少年局競技スポーツ課の芦立訓課長(49)は、琴光喜だけでなく実態調査結果の公表を検討するよう要求。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が15日に「うみを出し切る」と発言したことを受け、名古屋場所を中止するほどの覚悟を求めた。

 3日連続で日本相撲協会の訪問を受けた文科省の芦立課長は、怒りを通り越してあきれていた。報道陣に監督官庁としての行政指導を問われると「指導するまでにも至っていない」と、相撲協会の非常識ぶりに首をかしげた。

 琴光喜の出場停止を了承する一方、「上申書」と称した実態調査で賭博を申告した残る64人を「誰だか分かってしまう」という理由で、名古屋場所に出場させる結論を強く非難した。名古屋場所の開催にも言及し「武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が『うみを出し切る』と言った相撲協会の決意、覚悟が必要。状況はそこ(開催中止)まで深刻になっている」と断言。徹底して実態解明しなければ、本場所の開催は「社会的な理解を得られない」と指摘。陸奥親方は「大きいことは理事会で決める。理事会の議題になるかもしれない」と近日中に再び緊急理事会の開催を示唆した。

 文科省がこの日、賭博問題で相撲協会に求めたのは3点。(1)外部有識者による調査チームの設置(2)上申書で賭博への関与を申告した65人(野球賭博29人、その他36人)の再調査と公表(3)力士や親方ら協会関係者からの新たな情報収集。

 (1)は14日に依頼したが進まず、業を煮やしていたがこの日急きょ結成された。(2)について芦立課長は「軽微なもので、土俵に上がっても問題ないかどうか判断する必要がある」と理事会での協議を要請。(3)は「匿名で構わない」(同課長)と、協会に報告しやすい環境づくりを求めた。

 芦立課長は、当初は野球賭博を否定していた琴光喜が一転、認めた事実を重く受け止めていた。「以前は力士が『やっていない』と言えば、協会は信用していた。これからは疑ってかからないといけない」と方針転換を迫った。また新たな賭博関与が発覚すれば「上申書そのものが疑わしくなる」と、調査のやり直しも視野に入れる。

 問題は広がる一方で、野球賭博への関与を認めた29人の中に指導する立場の親方も数人、含まれていることが分かった。17日発売の週刊新潮では、大嶽親方(元関脇貴闘力)と幕内豊ノ島(時津風)の名前が出ている。陸奥親方は「(報道が)出るのであれば当人たちを呼んで聴取する」と17日にも対象者を呼んで、事情聴取する方針を固めた。闇が切り裂かれていくと同時に角界は過去最大級の危機に直面している。