ついに天皇賜杯まで消える!

 日本相撲協会は7日、名古屋場所での協会外表彰をすべて辞退すると発表した。幕内優勝に対しては昨年23の表彰がされたが、賜杯授与など22の表彰がなくなる。唯一残るのは協会による優勝旗授与だけ。金一封に副賞を合わせると、1000万円を超える金額が消えると思われる。持ち回り理事会で承認されたが、4日に就任した村山弘義理事長代行(73)の強い意向で決定。NHKの生中継中止まで発展した強い逆風に、角界再生への決断となった。

 場所の最後を飾る幕内優勝の表彰式。晴れやかで、延々と続くのが恒例であり、相撲ならではであった。その「名物」も、名古屋に限ってはなくなることになった。

 6日までにはコカ・コーラとJA全農から自粛の申し出があった。日本相撲協会は昨年の残り20の各授与者にも辞退を連絡。広報部が「名古屋場所を反社会的勢力と決別し、再生に歩み出す場所と考えております。1歩を踏み出したにすぎない現在の状況下で、協会外からの表彰を受けるのは適切でないと判断しました」との文書を発表した。

 持ち回り理事会で承認されたが、名古屋場所担当の二所ノ関部長(元関脇金剛)は「代行の意向」と明らかにした。「全体的に今回の責任があるから。みそぎの1つという意味」と説明した。村山理事長代行は6日、NHKに生中継をお願いしたが、その2時間後に初の中止が決まった。いつまでも止まらぬ逆風に、協会トップとして、少しでも改革への意識を見せる必要もあった。

 国技の象徴とも言える天皇賜杯。1925年(大14)に摂政宮だったのちの昭和天皇が観戦し、その慰労としての御下賜金で作成された。翌26年初場所から、406場所にわたって欠かさず幕内最高優勝者に授与されてきた。協会が所有しているとはいえ、大事な大事な「頂き物」である。晴れの優勝力士はその賜杯を手にすることが出来ない。

 昨年の名古屋場所で行われた23の表彰のうち22の表彰を辞退する。各賞にはトロフィーや賞状など以外に、12の金一封と11の名産品などの副賞がつく。金一封は1つで推定50万円として合わせて600万円。副賞も加えると、1000万円を超す金額が消えると思われる。

 優勝者は千秋楽後に部屋に戻って、大関株式会社提供による大銀杯で、美酒を口にするのが恒例となっている。また、名古屋場所千秋楽は参議院選挙後。40キロで最も重い内閣総理大臣賞の杯授与では、菅直人首相が登場するかも注目だった。68年初場所から贈られている同杯の辞退も初。すべてはパーになった。

 唯一実施されるのは日本相撲協会による優勝旗授与のみで、優勝賞金1000万円には変わりない。しかし、優勝パレードも未定。さらに大入り袋、後日に東京場所で行われる優勝額の贈呈も決まっていない。

 今場所、横綱白鵬は史上初の3場所連続15戦全勝優勝がかかる。しかし、自らの花札賭博公表、付け人頭とトレーナーの野球賭博関与が判明。けいこ不足以上に精神的動揺がある。他の力士にはチャンスでもあるが、二所ノ関部長は「初めての優勝だったら、かわいそう。力士は寂しいでしょうし、お客さんも物足りないだろう」と、寂しそうに話した。