<大相撲九州場所>◇4日目◇16日◇福岡国際センター

 大関挑戦中の関脇稀勢の里(25=鳴戸)が、4連勝で全勝を守った。西小結の豊真将(30)と立ち合いが合わずに3度突っかけられたが、迷わず攻めて寄り切り。課題だった精神面でも確実に成長の跡を見せ、昇進目安の11勝まであと7勝とした。

 稀勢の里に迷いはなかった。立ち合いに3度、豊真将に突っかけられ、待ったを繰り返した。次はどう攻めてくるか。しかも過去4勝5敗と合口はよくない。心に不安が生じやすい状況ながら、自分の相撲を貫いた。「(突っかけられても)冷静に、いつもの通りに。うまく相撲が取れたと思いますけど。相手より下に入れた」。右を張って左をねじ込むと、右上手も引いて盤石の寄りだった。

 これまでなら、頭に血がのぼってもおかしくなかった。自信が大きく膨らみ始めている。場所前、稀勢の里は言っていた。「硬くなってるなと、自分で冷静に判断できるようになってきたかなというのはある。前はもう、自分で何を考えてるのか分からなくなったりするくらい熱くなってた」。時には気づけば取組が終わっていた時もあった。

 取組での冷静さを示す1つの要素が、仕切りに表れている。以前から目を盛んにパチパチと、まばたきさせるクセがあった。「何なのかな、病気かなあ。あまりよくないよね。頭に血がのぼってるんじゃないですか。それも今後の課題」との自覚があった。それが今場所は減ってきた。

 打ち出し後は豊真将とともに審判部に呼ばれ、呼吸を合わせるよう注意を受けた。審判長の中村親方(元関脇富士桜)は「ああいう立ち合いだったけど、相撲は完璧だったね。落ち着いてるし、前半を乗り切れば面白いね」と評価した。

 「体は初日から動いてる。立ち合いが合わなかったのは、まあお互いさまだから」。難敵を下して無傷の4連勝。関脇では12勝した先場所に続く2度目だ。追い風に乗っている。取組後に急逝した先代鳴戸親方(元横綱隆の里)に関する質問も出たが、これには口をつぐんだ。師匠への思いは胸に秘め、土俵だけに集中していく。【大池和幸】