<大相撲初場所>◇5日目◇12日◇東京・両国国技館

 新大関の稀勢の里(25=鳴戸)は鶴竜(26)を破り4勝目を挙げた。

 土俵際には亡き師匠の教えがあった。稀勢の里は、投げの打ち合いを右足だけでこらえた。好調の鶴竜に土をつけ、自らは1敗を死守。「うまく踏み込めた。久々にいい立ち合いだった。最後だけ危なかった。攻めたから残せたのかも。『土俵際が面白い』と、よく親方に言われましたから」。昨年九州場所前に急逝した、先代鳴戸親方(元横綱隆の里)の言葉が頭をよぎる。面白いとは、勝負どころとも言い換えられる。

 先代の存命中には「土俵の外は千尋の谷と思え。最後まで気を抜くな」と口酸っぱく指導を受けた。俵ぎりぎりまで下がって仕切り、若い衆の当たりを何度も踏ん張って止める。そんな“三年先の稽古”が、今にも生きている。新大関の序盤を終えて「気を引き締めてやるだけ。1日1日が勝負。その結果ですから」。星勘定はせず、日々の土俵に全神経を注いでいく。