<大相撲夏場所>◇6日目◇11日◇東京・両国国技館

 東前頭2枚目の妙義龍(25=境川)が、またも大関狩りに成功した。日馬富士(28)を得意の押しで圧倒し、最後は寄り切り。3勝すべてが大関からの殊勲の星となった。1年前は幕下だった男が、史上初の6大関場所で存在感を示している。

 どちらが大関か分からないほどの完勝だった。妙義龍は当たって押し込み、右を差して寄り切り。十両昇進時、目標とする力士に挙げた日馬富士を圧倒した。2日目の鶴竜戦で対大関初勝利を挙げると、5日目には稀勢の里も下し、これで3大関を撃破。2日連続でインタビュールームにも呼ばれた。「うれしい。びっくりしている。立ち合いから2歩目が出ている」。

 6大関が話題の場所で、台風の目になってきた。初めて上位に挑んだ先場所は2日目に左足指3本を痛めた影響もあり、横綱大関戦に全敗。万全で臨む今場所前には「いつまでも挑戦者と言ってられない。勝たないと。上位を崩していきたい」と“予告”していた。

 高い身体能力が自慢。中でも瞬発力には自信を持つ。「走るのは速いっすよ。特に20メートル走が得意」と胸を張る。埼玉栄高時代には、立ち幅跳び2メートル71をマーク。同級生の豪栄道を30センチも上回った。この相撲部記録は、今も破られていない。下半身のバネを生かし、押し相撲を磨いてきた。

 新十両の10年初場所で左膝靱帯(じんたい)を断裂し、三段目下位まで落ちた。1年前は幕下だった。膝をかばいながらの土俵が続いたが、先場所13日目に吹っ切れた。

 負傷時の相手だった臥牙丸を破り、泣きながら勝ち名乗りを受けた。ただ、リベンジを喜ぶ涙ではなかった。「取ってる最中に、左足にグッと力が入った。けがしてから今まで、そんなことなかったのに。そこに歓声が来て。土俵上で、もう泣いてましたね。これで1歩前進だなと」。

 同じ境川部屋の豪栄道、豊響の活躍にも刺激を受けている今場所。勢いそのままに、7日目は全勝の琴奨菊に挑む。「先場所は圧力負けした。思い切っていきます」。平幕の1場所4大関撃破なら、史上6人目となる。【大池和幸】

 ◆妙義龍泰成(みょうぎりゅう・やすなり)本名・宮本泰成。1986年(昭61)10月22日、兵庫県生まれ。埼玉栄高で豪栄道と同期。日体大4年時に国体など5冠を達成した。09年夏場所で、幕下15枚目格付け出しデビュー。10年初場所新十両、11年九州場所新入幕。通算97勝43敗33休。187センチ、140キロ。