<大相撲初場所>◇14日目◇26日◇両国国技館

 高見盛(36=東関)の十両残留が絶望的になった。西十両6枚目の朝赤龍(31=高砂)に下手出し投げで敗れ、痛恨の10敗目を喫した。現在の番付は東十両12枚目で、来場所は幕下に陥落する見通し。以前から幕下降格なら引退する考えを示しており、現役続行への道はついに絶たれる。今日27日の千秋楽、若荒雄(28)との取組が最後の一番になる。

 最後の望みが、絶たれた。十両残留が絶望的になる痛恨の10敗目。奮闘をたたえる盛大な拍手の中、高見盛は肩を落として花道を引き揚げた。

 懸命な攻めも実らなかった。立ち合いで左脇を締めてきた朝赤龍に対し、右腕を何とかねじ込んだ。左上手も取って、前に出た。だが、相手の下手投げで頼みの右腕が抜けて、体が開いてしまう。最後は後方へ引きずられながら尻もちをついた。立ち上がろうとした際に、ガクリと膝が崩れた姿は痛々しかった。

 「体はよく動いてるんじゃないですか。うまくいかないな…」

 支度部屋を出ると約50人の報道陣を引き連れ、3日続けて早歩きで外に出た。終始うつむきながら歩いていると、街灯の鉄柱にゴツンとぶつかり、額を押さえて立ち止まった。現役続行の夢を阻む黒星のショックで、視界も狭まっていた。

 JR両国駅までの歩道ではファンから「やめるな~」「やめないで!」と声を掛けられた。場所前から右足甲を痛めて「力が入らない」と嘆き、場所に入ってからは右肩痛に悩まされた。だが、国技館に来れば温かい声援に背中を押された。力の衰えが隠せない中、気持ちを切らさず土俵に上がれたのも支えてくれたファンのおかげ。「ありがたいですね。ありがたいです」と、地面を見つめながら感謝した。

 以前から幕下に転落すれば引退する意思を示しており、今日27日が現役生活15年の千秋楽になる。取組後、部屋のパーティーで、胸椎後縦靱帯(じんたい)骨化症の治療から退院した東関親方(元前頭潮丸)らと話し合い、進退について最終決断をする。「全部終わってから考える。明日までは取る」と高見盛は言った。心身ともにボロボロでも戦い切る。愛され続けたファンの前で、最後の力を振り絞る。【木村有三】