<大相撲名古屋場所>◇13日目◇25日◇愛知県体育館

 大関琴奨菊(30=佐渡ケ嶽)が、西前頭3枚目の大砂嵐(22)を押し出し、2敗を守った。1敗の横綱白鵬(29)が敗れたため、西前頭11枚目の高安(24)と3人で優勝争いの単独トップに並んだ。今日14日目は高安と直接対決。初優勝と日本出身力士8年半ぶりの賜杯獲得へ、生き残りをかける。

 琴奨菊の鋭く低い立ち合いが、大砂嵐のかち上げを止めた。「踏み込みが良かった。しっかり体の反応も良かった」。相手がかち上げを繰り出す前に、痛めている右大胸筋をぶち当て、相手の上体を浮かした。まわしを取ることも考えず一気に前へ。土俵際に追いつめると、右腕1本で大砂嵐の胸を激しくひと突きして、土俵下まで押し出した。

 支度部屋では「大砂嵐の大胸筋、えぐかった」と笑わせるほど、気持ちは穏やかだった。その直前、風呂上がりにモニターで白鵬の敗戦を確認。自力優勝が復活し小さく拳を握った。「自分のことだけ考えてやってきたから良い相撲が取れてきた。先を見てもしゃあない。とりあえずケガなく終わってよかった」。体の無事を確認し、笑顔を見せた。

 昨年の九州場所で右大胸筋を断裂した後、全国から応援の声や激励の品がさらに多く届いた。手紙やメールはすべて読む。食事も通常のメニューの他に贈られた食品を小鉢に分けておかずに。品数は常に10品を超える。「みんなの気持ちもパワーにしたいから。自分のためじゃなく、応援してくれる人のため。恩返ししなきゃ」。好調の原動力を、しっかりと体に蓄えている。

 今日14日目は同じ2敗の高安戦。初優勝をつかむためには負けられない。13日目を終えて3人以上が並走するのは12年夏場所以来、約2年ぶり。気温37・9度を記録した名古屋は優勝争いも熱くなった。「自分は熱くならず冷静にね」。08年夏場所の琴欧洲以来となるかど番での優勝へ、今日も思い切り右胸からぶつかっていく。【鎌田直秀】