中日が延長12回の末に競り負けたのだが、そこからさかのぼること4時間半前、私は中日のラインアップを見て、わずかに頭の中が混乱していた。先発藤浪に対し、全員左打者を並べていた。
それは、はたしてどういう背景があるのだろうかと。藤浪には抜けるボールがある。それもあの球威だ。右打者からすれば、どうしてもその恐怖と背中合わせの打席になる。
むろん、そこを恐れていては話にならない。とは言え、ベンチからすれば剣が峰の残り35試合を考え、慎重になる事情もわかる。あるいは、左打者の方が攻略する確率が高いと判断したのかもしれない。
見方を変え、藤浪の立場からすれば、ボールが抜けることを気にする必要がなくなったのは間違いない。6日、巨人との2軍戦でも藤浪は右打者2人に死球を与え、7四死球の乱調で5失点していた。だが、左打者ならば、死球を気にせず割り切って腕を振ることができる。序盤、真っすぐとフォークで無難に入り、3回からはそこにスライダーを交えた。5回を5安打1失点。藤浪にとっては手応えのある復帰初先発となった。
現在5位の中日が、Aクラスに食い込むにはここからの1勝が非常に重くなる。かつ、目の上の広島、DeNAをたたくことは必須。この3連戦、連敗しているだけに、藤浪を打って浮上への白星は絶対に譲れないところだった。
なのに、藤浪に気持ち良く投げさせ、1点に抑えられた。右の主力の細川、チェイビス、山本を温存し、後手に回った印象はぬぐえない。仮に、藤浪の制球難を念頭に、右打者が恐怖心からバッティングを崩すリスクが、ちらりとでも頭をかすめたのなら、それも監督としては一考すべきことかもしれない。
そこを踏まえた上で評論するなら、残り40試合を切ったここからは、数字的な区切りがつくまで、もっとも勝つ確率が高い布陣を優先するしかないということだ。もしも、左打者ばかりで藤浪が投げやすかったことが、このもつれた試合展開の一因にあるなら、そこはしっかり考えなければならない。
中日は粘った末の敗戦だったが、私の中のもやもやは晴れない。あの左打者を並べた決断は、ネガティブなものだったのか、ポジティブな決断だったのか。何としてでもAクラスに割って入る中日ならば、迷わずポジティブだったと思いたいが、そうと割り切れない後味だけが残ってしまった。(日刊スポーツ評論家)




