巨人担当ながら昨季まで担当していたこともあり、DeNAのCSを取材した。巨人とDeNA。CS進出の残り1席を争った、2球団の比較は新鮮かつ鮮明だった。やはり、今はDeNAに力も勢いもあると感じた。巨人のあるベテラン選手は「野球選手のピークは25~30歳ぐらいまでが一番じゃないかと思う」と話していたのを思い出した。

 主将はDeNAが筒香、巨人は坂本勇。ともに“ピーク年齢”に当てはまる。だが、オーダーを見れば両球団に大きな差がある。ベテラン頼みから脱却しきれない巨人と、世代交代が順調に進み、若手が主力になったDeNA。この先、数年を見ても期待値に大きな差があると感じざる得ない。

 一方で巨人には豊富な成功体験がある。打って、投げるだけが野球の勝負ではない。長丁場のペナントレースで、より確率を上げる一種の統計的な側面がプロ野球の特色でもある。勢いだけで勝てる世界でもない。勝負の「間」をいかにして制するか。熟練の経験値がものを言う。体力は年齢と比例して衰える。ただ、技術、経験は簡単に衰えるものでもない。

 一般的に「魅力」という意味ではDeNAに軍配が上がるだろう。だが、勝負はそんなに簡単なものではない。体と体、意地と意地をぶつけ合う。CSファーストステージ第2戦、世紀の泥んこ試合で筒香が言った。「向こうも本気。こっちも本気。戦いなので遊びじゃない。感情を抑えすぎても、いきすぎでもダメ。そんな簡単なことじゃない」。データ、傾向、慣例は勝負の側面に過ぎない。だから勝負の世界はおもしろい。【巨人担当 為田聡史】