<日本ハム-オリックス>◇31日◇札幌ドーム

日本ハム浦野博司投手(31)が、札幌市内の球団事務所で引退会見を行った。「正直なところ、あまり実感はないです。辞めるんだという気持ちも、あまりないです。だから、明日からも、まだ野球をやるのではないかという気持ちでいます」と率直な心境を明かした。

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浦野の生きざまは、グラブに刻まれている。「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」。目的を果たすために、苦難に耐えて機会を待つことを意味する。「あまり前向きな意味ではないんだけどね。自分には合っていると思った」。グラブの裏に、こっそり刺しゅうした。プロ入り後は何度も、この言葉をかみしめた。

「呪われている」。2年目の15年、開幕3戦目の先発に内定も右肩痛で幻に。1年目のCS登板などが評価されつかんだ舞台に、立てなかった。「大役に縁がない。そういうのは(大谷)翔平とかが、やったほうがいい」。普段は積極的に年下を立て、笑顔で後ろに回る。この時ばかりは、言葉とは裏腹な思いがうずまいた。

大ケガを乗り越えた後は、満身創痍(そうい)で戦った。16年に右肩が壊死(えし)した状態のインピンジメント症候群を発症。自然治癒を選択した。復帰後は約2年ぶり勝利を挙げたが、心と体が追いつかない。「もう、みんなに忘れられているでしょ?」と言った。『目的を果たすために、苦難に耐えて機会を待つこと』も、限界が近づいていた。

耐え忍ぶ、厳しさを知った7年間。第2の人生は、笑顔で歩き始めてほしい。【日本ハム担当=田中彩友美】

引退会見で花束をもらう浦野(撮影・黒川智章)
引退会見で花束をもらう浦野(撮影・黒川智章)
日本ハム浦野博司(2020年2月11日撮影)
日本ハム浦野博司(2020年2月11日撮影)