DeNA今永昇太投手(28)が充実のキャンプを過ごしている。第2クールでは、打撃投手登板で初実戦。今永は「バッターがテークバックを引くってことは、『刀』を抜くっていうイメージ。自分はそれでも慌てないように、そこを意識できれば力感のないフォームからヒュッと、見にくい球を(投げられる)」。昨季公式戦以来の実戦を迎え、バットを刀にたとえて表現したのは、必然だったかもしれない。

今キャンプ、読書用に「最高の戦略教科書 孫子」を持ち込んだ。「本を読むのは苦手なんですけど、自分が目次を見て、おもしろいなと思ったところを読んでます。相手とはなんぞや、自分とはなんぞやっていう話なので、結構おもしろいです」。約2500年も前に、軍師・孫子によって書かれた兵法書。「敵を知り己を知れば百戦してあやうからず」という孫子の名言があるように、現代社会にも活用できると、知人にすすめられたという。

宿舎の部屋では「アロマキャンドルをやっているんです。火をつけて、火を見ると人間って落ち着くらしいんで、瞑想(めいそう)しています」。暗がりの中、ともる火を見ながら香りに包まれながらリラックスしているという。一見独特だが、独自のリラックス方法を確立したのも、自分というものを知るからこそ。すべてのことが、マウンドで対峙(たいじ)する打者との駆け引きにも、通じていく。

20年10月に左肩のクリーニング手術を受け、昨季は5勝にとどまった。完全復活を期した今季、勝ちを重ね見据える先には個人タイトルがある。「自分に勝ちがつけば、チームにも勝ちがつくわけで。チームのためになることを自分のためにやるように。その上で最多勝という、勝つということを一番目標にしている。そういうものを狙いながらやって、獲得できればなと思っています」。勝つための兵法を模索するその口ぶりは、まさに軍師のようだった。【遊軍=栗田成芳】