全国高校野球選手権大会が6日、甲子園で開幕した。101回目を迎えた夏は、どんなドラマが待っているのか。さまざまな角度から、球児たちの熱き戦いを追う。

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初めての甲子園は開幕戦で敗れたが、誉(愛知)の林山侑樹主将(3年)は「100点です。それ以外ありません」と胸を張った。選手宣誓のことだ。

「宣誓。平成が終わり、令和という新しい時代を迎えました。平成の歴史を振り返ると、決して平たんな道のりではありませんでした。夏の甲子園も多くの困難を乗り越え、偉大な先輩方がつないでくれたおかげで101回という新たなスタートを切ることができました。そして、多くの人に支えられ、大好きな野球ができることに感謝し、たくさんの思いが込められ、重く、輝くバトンを託された私たちは、この101回目の大会を記憶に残る大会にすることを誓います」

1語1語、よどみなかった。かみ気味だったリハーサルから修正した。

元年夏の選手宣誓には先人がいる。89年(平元)、第71回大会の仙台育英・高橋左和明主将だ。

「宣誓。我々選手一同は、全国高校球児の夢とあこがれの、ここ甲子園球場において、新しい時代の幕開けにふさわしい技と熱のこもった試合を展開することを誓います」

高橋さんは今でもそらで言える。時代の節目を意識した共通項があるが、こうも願う。「時代の変わり目といっても、高校野球が大きく変わるわけではありません。ファンが増えるような、燃えるような宣誓であって欲しいですね」。現在は九里学園(山形)で監督を務める。元球児からのメッセージだった。

林山の念頭には、平成に多発した災害があった。「野球がしたくてもできなかった人たちがいる。令和はそういうことがない、平和な時代であって欲しいです」。観客に意図は伝わった。拍手に包まれた。

1929年(昭4)、第15回大会の慶応商工(東京)・黒崎数馬主将から始まった選手宣誓は、時代を映す鏡でもある。39年(昭14)、第25回大会は「我等ハ時局ノ重大ニ鑑ミ益々心身ヲ鍛錬シ銃後学生ノ本分ヲ尽シ必ズ国家ノ良材タランコトヲ期ス」(山形中・三上七郎主将)だった。そんな宣誓をするしかなかった。くしくも、この日は8月6日。人類が決して忘れてはいけない日。託されたバトンのリレーが、いつまでも続くことを。【古川真弥】