今年のプロ野球ドラフト会議では、育成も含め128人が指名された。アマチュアでプレーする多くの選手にとって、夢でもあるプロへの道が開かれた。その一方で、希望しながら指名がなかった選手や、このタイミングではプロ志望届を出さなかった選手もいる。彼らの思いに迫った。

大学進学予定の花咲徳栄・堀越(撮影・保坂恭子)
大学進学予定の花咲徳栄・堀越(撮影・保坂恭子)

4年後のドラフト1位指名へ-。花咲徳栄(埼玉)の堀越啓太投手(3年)には、新しい目標ができた。9月、プロ志望届を提出。しかし、ドラフト会議で名前は呼ばれなかった。バッテリーを組んでいた味谷大誠捕手は、中日から4位指名を受けた。チームメートの喜ぶ顔は、輝いていた。「自分のことみたいに、うれしかったです。それを見て、4年後は絶対にプロに行きたい、1位で行ってやろうと思いました」。来年からは、大学に進学する予定だ。

高校最後の夏は、あっという間に終わってしまった。「最後の大会で(スカウトに)アピールできなかった」と、悔しさが残った。花咲徳栄は今夏の埼玉大会5回戦、5-6で山村学園に敗れた。堀越は2番手として1-2の7回から登板。2回を被安打4の3失点(自責2)。帰りのバスの中、気持ちを切り替えるチームメートの横で泣き続けた。6大会連続の甲子園出場がかかっていたが「自分のせいで負けました。無駄な失点をして、焦って動揺して…。連覇を途絶えさせてしまった」。お世話になった指導者や親の顔が、頭の中に浮かんでいた。

強豪校ならではの重圧や歴史がある。先輩たちが甲子園のグラウンドでプレーする姿は、ずっとアルプスから見てきた。今春のセンバツは、同じ関東地区の東海大相模(神奈川)が優勝。その様子は、テレビで見た。「行かなければいけない場所」と定めていた甲子園のマウンドには、3年間で1度も立てなかった。連覇のプレッシャー、プロ注目選手と言われる中での大会。「お前のせいじゃない。気にするなよ」。チームメートの言葉で、ようやく涙が止まった。

所沢南シニアから花咲徳栄へ進んだ。全国から強豪選手が集まる環境で「周りに比べて無名だし、力がないし、不安だった」。それでも、直球の質は抜群だった。183センチの長身。スリークオーターからしっかりと腕を振り、キレのある球を投じる。1年夏から、レギュラーチームに加わって練習をこなした。最速は148キロ。岩井隆監督(51)も「直球の球威がある」と認める逸材だ。3年間を経て「少しずつ自信がつきました」と笑う。

引退後は、大学野球に備えて自ら練習メニューを考えて取り組む。リーグ戦を戦い抜くには、なにより体力強化が重要。目標とするのは「球速を上げて、直球で押せる、三振を奪える」投手。週に4日はブルペン入りし、1回に100球以上を投げる。「もっと成長したい」という強い思いを抱えて、新しい舞台に飛び込む。【保坂恭子】

(つづく)