いつもの球場とは少し違った熱気が漂っていた。今季パ・リーグとアニメ「ラブライブ!」シリーズがコラボしている。5月から7月にかけて、6球団が本拠地でコラボ試合を開催。当日、限定グッズを求めラブライブファンが早朝から長蛇の列をつくった。作中の声優らが登場するトークショーでは、コラボグッズユニホームを着用して、特設会場を埋め尽くす。合いの手が入った異様な盛り上がりはまさにコラボがもたらした空気感だった。

一見、異なる世界の野球とアニメ。ただ相性はいいとみている。ラブライブの担当者は「スクールアイドルグループがみんなで力を合わせる作品で、スポ根要素がある。そういう意味では、スポーツ異業種とのコラボというのは、親和性があるのではないかと打診させてもらい、今回パ・リーグさんと実現しました」。SNSなどを通し、相互ファンから反響は高く、互いの面白さに気付く機会として、効果を発揮している。

北から南まで日本列島を縦に広がるパ・リーグ。ラブライブをきっかけにプロ野球に触れる人もいれば、試合を見に来た人が普段と違う空気を察知し、ラブライブを知る人もいる。「見た目は違うけど、お客さんの好きな本質は似ていると思っています。チームが頑張って大きな目標を達成しようとするのを見て、熱くなる気持ちというのは、ラブライブシリーズと野球の似ている所だと思う」(同担当者)。別々の世界観が、異業種コラボによってタッチポイントをつくり、双方にメリットが生まれる。

既存ファン同士から自然派生的に融和の声が上がった。5月7日、ロッテの本拠地ZOZOマリンでのコラボ試合ソフトバンク戦。試合展開は一方的となり大差がついてロッテが敗れた。そこでロッテファンからSNS上で「せっかく見に来てくれたのにラブライバーの方に申し訳ない。野球はもっと楽しいのでまたきてください」。一方でラブライブファンは「球団に迷惑かけちゃいけない」と、マナー順守を呼びかけた。異業種が水と油とはならず、調和を生み出したこともやってみて分かったことだ。

パ・リーグでは、スマホゲームアプリ「ドラクエウオーク」とのコラボも2年目に入った。今回はコラボ試合でホームラン本数によって、ゲーム上のふくびき補助券プレゼントを企画。またコラボメガモンスターが球場に登場するなど、自然と野球の試合に目を向ける仕組みにブラッシュアップしている。「野球×異業種」。単独での成長ではなく、共存共栄の道は何倍ものチカラに膨れ上がる可能性を秘めている。【栗田成芳】(つづく)