16年以来の世界一を目指すカブスにとって、メジャー17年目の大ベテラン、ジャスティン・ターナー内野手(40)は、何としても必要なピースの1人だった。昨オフ、1年600万ドル(約9億円)で契約。グラウンドのプレーだけでなく、チームを束ねるクラブハウスリーダーとして首脳陣からの期待値も高い。「カブスに来ることができて、これ以上幸せなことはない。地区優勝してプレーオフへ進む機会を楽しみにしている。この年になれば、勝てる場所に行くことが最も大事なことなんだ」。限られた残りの現役生活で、もう1度、頂点に立つためにカ軍入りを選択した。

3日、ベンチで談笑するカブスのジャスティン・ターナー(AP)
3日、ベンチで談笑するカブスのジャスティン・ターナー(AP)

ドジャース時代の17年、ナ・リーグ優勝決定シリーズでMVPを獲得。20年には世界一を経験した。巧みなバット操作で広角に打ち分け、16年、19年、21年にそれぞれ27本塁打を放つなど、常に中軸を担ってきたものの、個人タイトルとは無縁だった。

その一方で、試合のカギを握る場面で発揮する無類の勝負強さは、メジャー全体でも屈指。試合の流れを的確に読み、状況判断に優れ、たとえ凡打しても進塁打などの「プロダクティブ・アウト(生産的なアウト)」が多いため、チーム内でも信頼感は極めて高い。

豊富な経験に基づく、説得力の伴う言動も、今の若いカ軍には必要だった。カ軍移籍後、ターナーは全国紙「USAトゥデー」のインタビューで、昨季所属したマリナーズ経営陣の消極的な補強策を痛烈に批判。マ軍選手の本音を代弁したこともあり、その後、他のメディアが追随するなど、大きな反響を呼んだ。

ブレーブス時代の21年、世界一を経験したダンスビー・スワンソン遊撃手(31)は、公式戦、ポストシーズンの長丁場を戦い抜くうえで、ターナーのようなベテラン選手の存在価値を強調する。「彼は長い間、すばらしい選手としてやってきた。我々が多くのことを学べる選手の1人。本物のプロであり、この集団に大きなインバクトを与えると思う」。現在のカ軍には、前回の世界一当時のメンバーはいない。それだけに、「ウイニング・スピリッツ(勝者の魂)」を持つターナーがもたらす有形無形の効果への期待は大きい。

通算125発のスラッガー、カイル・タッカー(28)をトレードで獲得したのも、カ軍フロント陣の「会心の一手」だった。まだ若手の年代ながら、アストロズ時代の22年世界一をはじめ、19年以来6年連続でポストシーズンを経験した。22年から2年連続100打点を挙げた勝負強さだけでなく、22年には右翼でゴールドグラブ賞、23年には30盗塁をマークするなど、3拍子そろったスター選手として全米中に認知された。FA移籍したコディ・ベリンジャー(ヤンキース)に代わる左の得点源として、申し分ない補強だった。

ターナーの年度別メジャー成績
ターナーの年度別メジャー成績

今季4年目を迎える鈴木誠也外野手(30)への期待も高い。昨季は6~7月に調子を落としながら、最終的に打率2割8分3厘、21本塁打と力強くフィニッシュした。ホイヤーGMは「まだ彼にとってベストのシーズンは来ていない。もっともっと良くなり続けるだろう」と、今季の大ブレークを予想する。打順も「3番」に固定される見込みで、タッカーと並ぶ攻撃の軸として期待される。

確かに、昨季世界一のド軍のような圧倒的な破壊力はない。だが、戦力がそろっていても勝てる保証はない。元ド軍のターナーは、あらためて自らの野球観を口にする。「目標は、毎日準備してプレーできるようにすること。どんな役割でもかまわない。打順はどこでもいい。代打でもいい。勝利の助けになるため、常に準備をするだけだ」。20年以来のポストシーズンへ向け、欠けていた重要なピースは埋まった。【四竈衛】

◆ジャスティン・ターナー 1984年11月23日、カリフォルニア州ロングビーチ生まれ。カリフォルニア州立大フラートン校から06年ドラフト7巡目(全体204位)でレッズ入団。09年9月にオリオールズでメジャーデビュー。14年から所属のドジャースで17年リーグ優勝決定シリーズMVP、20年世界一。21年には投手での登板も経験。17、21年球宴出場。今季年俸600万ドル(約9億円)。180センチ、94キロ。右投げ右打ち。