日本中に熱狂を与えてきたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が、史上初めて動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」による国内独占配信という新たな局面を迎える。配信の壁を打破するための異例の値下げ、全国150カ所でのパブリックビューイング(PV)、そして日本テレビとの共闘。デジタルとリアルを融合させ、誰もが「最強応援団」になれる未来を模索するNetflixの挑戦と、その舞台裏に迫る。後編です。

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地上波でWBCが見られない-。この一報が流れたとき、NPB榊原定征コミッショナー(82)が示した懸念は、多くの国民の不安を代弁するものだった。今年1月5日の年頭あいさつでは「日本は地上波の影響力が依然として強い。アメリカとは事情が異なる」と重要課題に位置づけていた。

日本ではWBCは地上波を中心に放送され、国内で5~6000万人規模のファンが視聴してきた。球界関係者によると、これまで30億円程度だった放映権料は150億円に高騰したという。さらに前回大会は主催者のWBCIが、日本ラウンド主催の読売新聞社を通じて国内の放送局に放映・配信権を付与したが、今大会は同社を通さず直接Netflixに権利を与えた。MLB関係者は「米国と日本向けの権利は別個に交渉した。今回はNetflixが強い関心を示してきた」と話した。

WBCは契約者だけの娯楽に閉じてしまうのではないか-。この課題に対し、Netflix坂本和隆コンテンツ・バイスプレジデント(43)は「広くあまねく、あらゆる形で説明したり、視聴機会を設け、高齢者や子供たちを含めてカバーしていく。初歩的なサインアップのやり方や、提携するキャリアのパートナーさんから説明していただくなどさまざまな角度で取り組んでいる」と話した。

国民的行事であるWBCを、かつてない包囲網で支えようとしている。中継制作のパートナーには、日本テレビを選んだ。長年プロ野球中継を支えてきた制作力や東京ドームを熟知した実行力を結集。そのノウハウを借りることで世界最高峰のクオリティーを担保した。ネットの壁を取り払うため、イオンモールなどの商業施設や全国の自治体と連携し、日本戦については150カ所に及ぶPVを展開する。さらに3月18日まで1カ月間の半額キャンペーンは、徹底したマーケティングの末の異例の決断だった。

ここで避けて通れないのが150億円ともいわれる巨額な放映権料だ。今回の配信では、たとえ「広告なしプラン」を契約しているユーザーであっても広告が挿入される。坂本氏は「ライブ配信においての広告連携というのは我々にとって非常に重要な戦略になる。視聴体験を妨げない、スポーツ視聴に即した新しい広告体験に力を入れていく」と、グローバル戦略の一環であるとした。

これまでのNetflixのルールからすれば異例だが、高騰し続けるスポーツビジネスを維持し、かつユーザーの月額負担をこれ以上増やさないための「現実的な着地点」といえる。DAZNなどの先行事例が直面した有料配信への広告表示の不満を、いかにNetflixらしいクオリティーで払拭できるのか。日本でのスポーツ視聴のあり方の転換点となりそうだ。【鳥谷越直子】(この項おわり)

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Netflixが開催した合同インタビューにオンラインで参加したアンバサダーの俳優渡辺謙
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【イラスト】侍ジャパンの日程
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