平成元年のシーズン途中にひっそり来日した外国人選手が、日本球界に強烈なインパクトを残した。オレステス・デストラーデ(56)。90、91年に本塁打と打点の2冠を獲得。秋山幸二、清原和博と「AKD砲」を形成し、西武黄金期の中核を担った。カリブの怪人と呼ばれファンに愛され、華々しく時代の扉を開けた助っ人に去来するモノは。

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秋山、清原、デストラーデ。西武最強の「AKD」の中で、当時一番輝いていたのは清原和博だった。甲子園のスターからプロ野球の若きスターとなり、常にスポットライトを浴びた。「映画スターかポップアイドルのような、スーパースターだった」とデストラーデは振り返る。

5歳年下だったが、野球に関して学ぶものも多かった。「キヨは、2ストライクからでも良い打撃をする。その点は、アキや僕よりうまかった。どうやって逆方向に打てるかも、キヨから学んだ」。

一目置く存在だった清原が16年に覚せい剤取締法違反で逮捕されたニュースは、デストラーデにも大きな衝撃を与えた。そのときのことを尋ねると「悲しかった」と深いため息をついた。逮捕のニュースを聞いた直後、日本の英字新聞ジャパン・タイムズから電話が入り、コメントを求められた。新聞を通じて清原にメッセージを送るつもりで「キヨの身体的、精神的状態を心配している。しかし僕の友人キヨが復活する日が来ると期待している」と答えた。

「あのとき、多くの人がキヨについて悪いことを書いていたが、信じられなかった。だが僕は違う。僕にとって、彼は特別な存在だ。自分は彼の一番のサポーターだと思っている。僕がいた当時、キヨ抜きに3連覇はあり得なかった。西武の素晴らしい歴史は、キヨ抜きではありえなかった」

関係者から現在の清原の様子は聞いているという。「キヨは間違いを犯した。しかし、その代償は払った。彼は9回裏に三振し、試合終了になった。しかし次の日にはまた試合がある。人生は終わりではないんだ」。

今後の人生をどうしていくべきか。「野球界に戻ることが必要だと思う。野球界というファミリーに」と即答した。どんな形で戻るのが理想的か。

デストラーデ自身、今はタンパベイ・レイズで中継解説を務めるだけでなく、球団の特別アドバイザーとして育成部門の仕事に携わっている。「球団を助ける仕事だ。球場を見て回るんだけど、毎日通う必要はない。若い選手に助言をするし、分析もする」。いわばパートタイムで球団とかかわる仕事。清原も、そのような形で球界に復帰するのが望ましいのではないかと提案する。「キヨが、野球のファミリーに戻ってくることを願っている」と繰り返した。(敬称略=この項おわり)【水次祥子、古川真弥】