一塁側ベンチ前、涙を流す選手の横で、東海大相模・門馬敬治監督(48)は、グラウンドに一礼してベンチ裏へと引き揚げた。直後に同じベンチに西谷浩一監督(48)率いる大阪桐蔭が現れる。2人の指揮官は、ともに69年生まれで「(昭和)44年会」のメンバー。準決勝で敗れた門馬監督は「大会前から優勝候補は大阪桐蔭と言われる中で、一番高いところを目指すのは当然」と、決勝での初対戦を思い描いていた。

 プロ野球界でも「松坂世代」「大谷世代」など同期のつながりが話題になるが、アマチュア野球界では「44年会」が躍進している。甲子園では昨春の大阪桐蔭、昨夏優勝の花咲徳栄(埼玉)岩井隆監督、そして今春の大阪桐蔭と“3連覇”の可能性がある。大学では昨秋の明治神宮大会で日本一に輝いた日体大・古城隆利監督、上武大・谷口英規監督、慶大・大久保秀昭監督ら、そうそうたる顔触れがそろっている。

 毎年関西と関東で会合を行い、1月19日は都内に約60人が集まった。東海大相模と大阪桐蔭は毎年夏の大会直前に練習試合を行う。きっかけは11年センバツで東海大相模が優勝した直後、大阪桐蔭の2年生に藤浪(阪神)がいた時だった。

 西谷監督は「チームをうまく仕上げられていなかった時に『そうだ』と電話して。『テストいつ終わる? 朝一番に行くので、本気で一発勝負やってくれんか?』と」。新横浜駅でレンタカーのバスを借りて、定期テスト終了直後の午後2時からフルメンバーの真剣勝負を行った。藤浪が好投して勝利。翌年の春夏連覇へとつながった。

 今では東海大相模が1泊2日で大阪を訪れることが慣例になった。ホテルは神奈川代表が甲子園出場時に宿泊する大阪ガーデンパレス。野球以外の行動も本番を想定し、“仮想甲子園”として真剣勝負する。

 門馬監督は、大阪桐蔭を「基準」としてチームをつくりあげる。「自分たちの『基準』をどこに置くか。高いところに置きたい。練習中から今のプレーは満員の甲子園で通用するのかと」と突き詰める。大阪桐蔭戦はその格好の機会。かつては同じ刺激を求めてPL学園(大阪)と戦うために大阪に向かった。「見て肌で感じないと『基準』が分からない。そこを超えないと日本一は見えない」。

 休養日だった2日の練習後、西谷監督は「いつか門馬とは、甲子園の決勝でできるようにがんばろうと。1回戦じゃないぞ、と。半分冗談で。そういう話をしたことはある」と笑った。

 実現すれば両校にとって春夏通じて甲子園初対戦だった。だが「44年会」の野望の前に、昭和21年生まれ、71歳の高嶋監督が立ちはだかる。門馬監督は「高嶋監督は最後までぶれなかった。一貫して打ち切りました。(甲子園初対戦の)18年前も強打と言われていたが、ずっと貫き通すのはすごい強さ。あらためて未熟だと思いました」と受け止めた。悲願は夏へと持ち越しになった。【前田祐輔】

三重対大阪桐蔭 3回根尾(手前)を迎える西谷監督(後方中央)(撮影・奥田泰也)
三重対大阪桐蔭 3回根尾(手前)を迎える西谷監督(後方中央)(撮影・奥田泰也)