東北一の豪打を誇る盛岡大付(岩手)を作り上げたのは、ライバル花巻東の存在だった。打倒大谷翔平(現エンゼルス)を掲げた監督の関口清治(40)は、打撃重視のチームにモデルチェンジし、12年夏の県決勝で大谷を撃破した。95年夏の初出場から春夏9回連続して初戦敗退していた甲子園では、13年センバツで初勝利。昨年は春夏連続で甲子園8強入りし、いまや強豪県となった岩手で花巻東と2強を形成している。

 すべては「怪物対策」から始まった。11年秋、県準々決勝で大谷擁する花巻東に敗れ、関口は限界を感じていた。08年8月の監督就任後から公式戦5連敗。相手と同じ投手力を軸に守り勝つ野球を捨てた。

 関口 このまま同じような野球をやっていても、花巻東には一生勝てない。どうやったら大谷君から点数を取れるのか。ヒットで出て送りバントしても、次の打者がタイムリーを打てるのか。大谷君からは長打2本で点を取るしかない。

 雌伏の冬を過ごした。タッグを組んだのは青森・光星学院(現八戸学院光星)の総監督、金沢成奉(51=現明秀学園日立監督)。フリーの立場で指導していた東北福祉大の先輩と2人で強力打線づくりに励んだ。当時、東北では珍しかった近距離バッティングを導入。5メートルも前の13メートル地点に打撃投手を立たせた。芯の小さい竹バットで打ち込ませ、タイミングの取りやすいマシン打撃は止めた。

 関口 大谷君のボールは選んでいても打てない。まずは低めのワンバウンドを見極めないと。振らなければボール。ストライクを投げるしかない。ヒットになる、長打になる確率のボールをおびき寄せるんです。

 通常週5日の練習のうち、4日間を守備練習に割いていたのが、大谷対策を始めた11月以降は4日間を打撃練習に当てた。雪の日も長靴を履いて振り込んだ。3月になると、見違えるほど長打力が増していた。

 関口 1日の練習試合2戦合計で10本塁打というのもあった。打てない試合がなかった。こんなに変わるとは思わなかった。

 12年春の県準決勝で花巻東を撃破すると、同年夏の県決勝では対策が実った。15個の三振を奪われながらも、2二塁打1本塁打を含む9安打を浴びせた。同準決勝で160キロをたたき出していた大谷を攻略した。

 関口 ある意味、大谷君の存在はデカかったし、相手さえも本気にさせた男だった。大谷君がいなければ、いつまでも昔のスタイルでやっていた。

 大谷との出会い以来、関口は花巻東に8勝3敗と勝ち越し、現在8勝8敗の五分。ライバルを糧にする。

 関口 花巻東の存在があるから、頑張れる。県内に2強時代が来た時に、甲子園で勝てる県になると言われてきた。盛付(もりふ)の打ち勝つ野球が勝つか、花巻東のしぶとい野球が勝つか、岩手県の方々は楽しみにしている。そういう盛り上げ方をしていきたい。夢は、センバツ一般枠で花巻東との同時出場です。

 信念は揺るがない。打って、打って、打ちまくる。

 関口 相手よりも1点多く取りたい。東北NO・1の強打という誇りを、自分の中でも持っていないと。1回作り上げたものを崩したくない。野球を始めた時の喜びは何だ、打つこと、遠くに飛ばすことだろうと。野球の原点はホームラン。打ち勝つのが信念です。(敬称略)【高橋洋平】

12年7月27日付け日刊スポーツ東北版
12年7月27日付け日刊スポーツ東北版