第106回甲子園大会では、前半の1回戦を4日間、現地で取材することができた。母校関東第一が快進撃を見せてくれ、私としては最後の最後までハラハラさせていただき、素晴らしい高校野球を堪能させていただいた。
何も言うことはないし、これだけの熱戦をやり抜いた高校球児と、大会を運営した方々に深く感謝したい。酷暑で非常に厳しい環境下でも、阪神園芸のみなさんをはじめとして、球児が全力を発揮できる環境作りに腐心されていることに、最大限の敬意を表したい。
そこで、私も球場の記者席で、あるいは自宅のテレビで熱戦を見守ってきた立場として、今後の参考になるポイントを、せんえつながら発信させていただきたい。これが、何かの形で選手や指導者にとってプラスになることを願っている。
確率3割3分3厘。今夏の甲子園大会48試合を見た上で、気になったデータを見つけた。打率ならばかなりの強打者。防御率ならば、プロ野球で言えば改善の余地あり。そして捕手の盗塁阻止率ならばなかなかの数字と言える。
これは全48試合で、6回表、裏の攻撃で得点した確率だ。16試合で6回に、先攻後攻のどちらかが得点している。「ああ、そうなんだ」と思われるファンの方もいるかもしれないが、これは私の率直な考えとしては、とても重要なデータになり得る。
なぜなら、そもそもグラウンド整備は大きな試合の分岐点になっている。これはプロ野球生活を通じて、以前から強く感じていたことだ。初回から快調にイニングを重ねてきた先発投手も、この5回終了から6回再開までの時間の過ごし方を誤ると、失点する。最悪は降板、そして敗戦になりかねない。
ましてや、一発勝負の高校野球で、それもあの灼熱(しゃくねつ)の炎天下となれば、クーリングタイムを設けたとはいえ、中断明けの6回に失点するリスクは数倍になるのではと危惧していた。3割3分3厘は決してあなどれない。
何人かの高校野球の指導者から聞いた事がある話をもとに、その理由を考えるに、いくつかの改善点が思い当たる。まず、10分間、体を冷やしてコンディションを整えたとしても、再びマウンドに登った時に体の体温調整がうまくいかない可能性がある。
この指摘は以前から言われてきた。10分間を有効的に使うには、初めの3分の1はクールダウンに、次の3分の1はベンチなどに出て暑さに順応する時間に、そして残りの3分の1は、軽くキャッチボールなどして、再び発汗などを含め酷暑マウンドに耐えうるよう体にシグナルを送ることに使ってはどうか。
確かに、再開前の各校のベンチを見ると、早めにベンチに出て体を慣らしている選手が増えてきたと感じる。細かいことだが、とても大切なことだ。大人ならばまだ適応できるだろうが、まだ高校生では、こうしたちょっとしたケアは、自分だけでは難しいだろう。
ましてや、初出場の高校では、こうした酷暑甲子園大会ならではの試合運営に戸惑うことも十分に考えられる。クーリングタイムの導入は、ひとつの試みとして大きな1歩となった。その試みを、さらに環境整備のため促進させてほしい。
プロ野球では、毎年2ケタ勝利できる投手ほど、6回の再開時に備えて自分でコンディションを整えていた。若手や、実績の乏しい投手ほど、ギリギリまで疲れを取り、そこまで気が回らないと感じ、当時の芝草宇宙や、島田直也ら若手投手たちに「ちょっと軽く投げておこうか」と、ブルペンに誘ったこともある。
同じ野球でも、翌日も試合があるプロと、負けたら終わりの高校野球では、その1秒をどう使うかという重みがまるで違う。それだけ高校生は繊細だし、体力、スタミナ、メンタルも周囲が気遣ってあげる部分は多い。
いいリズムで、いい流れで、そのまま試合終盤に入れるか。6回がもつ意味合いは、これからもますます大きくなっていくと感じた。大変な暑さの中で、渾身(こんしん)のピッチング、バッティングを見せ、酷暑をものともせず走り回る彼らは、確かに輝いて見えるが、体にダメージがあることも見過ごせない。
とことん、やり抜いたと感じる高校野球の集大成の花道であってほしい。これからもずっと続く高校野球のために、私としてはクーリングタイムの過ごし方と、6回のマウンドに立つ投手の準備について、考えを述べさせていただいた。(日刊スポーツ評論家)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「田村藤夫のファームリポート」)







