指揮官・矢野燿大の目から精気が失われている。連敗中とあって無理もないかもしれないが、それにしても元気がない。だからなのか采配まで固まっている気がして仕方がないのだ。

まさにお盆休みだ。火曜のDeNA戦から勝ちなしの6連敗となってしまった。これは開幕9連敗でどん底だったとき以来の苦戦ぶりである。何とかしなければ。首脳陣は、当然、考えるだろう。その1つとして井上広大を1軍に上げた。

それはいいと思う。今後のことを考えても若い選手をAクラスのかかっている重い試合で起用していくのは重要なこと。賛成だ。しかし「それ以前にやることもあるのでは…」という思いがしている。

勝ち越し機の8回、死球で出た山本泰寛の代走に出た植田海が盗塁を決めた。これがこの3連戦で阪神が決めた唯一の盗塁だ。これが象徴するように最近は動きが少なく思えて仕方がない。「俊足トリオ」のうち、中野拓夢、近本光司を欠いているので厳しいのは当然だが、それにしても動かないのだ。

この日は1、2、3回に併殺打が出た。その間、見る限りでベンチに策はなかった。エンド・ランや佐藤輝にスタートを切らせるなど相手の嫌がることを仕掛ける様子はない。スタメンで俊足なのは島田海吏だけ、外国人が3、5番にいる打順では難しいが、それでももう少し動かしていかないと何も起こらないのでは…と感じた。

31イニングぶりの得点となった5回、虎党を喜ばせたのはロハスの3ランだろう。盛り上がったが、今の阪神は助っ人の1発を待つスタイルではないはず。「積極的ミスはOK」と位置づける「オレたちの野球=超積極的野球」はどこへ行ってしまったのか。最下位・中日が岡林勇希にガンガン走らせたり、スクイズを仕掛けてきたりとアグレッシブだったのとまるで対照的だった。

ベンチも自覚しているはず。だがコマ不足もあり、後手に回ったりと苦しいのだろう。それでも固まっていても状況は変わらない。「終戦」級の6連敗となってしまったが残りシーズンを少しでも面白くするため、16日からの東京6連戦では原点に戻ってほしい。

「やるしかないよね。(試合は)待ってくれないんで。頑張ります」。虎番キャップたちに話した矢野。その通り、まだやるべきことはあるのではないか。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 9回表中日1死一、三塁、木下の3バントスクイズは失敗するも、岩崎の投球は高く浮き、梅野も捕れずに勝ち越し点を献上する(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 9回表中日1死一、三塁、木下の3バントスクイズは失敗するも、岩崎の投球は高く浮き、梅野も捕れずに勝ち越し点を献上する(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 9回表中日1死一、三塁、木下の3バントスクイズは失敗するも、岩崎の投球は高く浮き、梅野も捕れずに勝ち越し点を献上する(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 9回表中日1死一、三塁、木下の3バントスクイズは失敗するも、岩崎の投球は高く浮き、梅野も捕れずに勝ち越し点を献上する(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 選手交代を告げる矢野監督(撮影・上田博志)
阪神対中日 選手交代を告げる矢野監督(撮影・上田博志)