全体練習が終わり、一塁側アルプス席に座った指揮官・岡田彰布は虎番キャップたちの取材に応じていたときのこと。突然、岡田が「どうなったん?」と監督付広報・藤原通に聞く。「負けました」と藤原。「あ、そう」。岡田は寂しそうに返した。
日本シリーズ第3戦を前に何の話か…と思ったら「早慶戦」の話だ。この日、東京6大学野球リーグ(神宮)で3回戦が行われ、慶大が早大を5-3で下して4季ぶり40度目の優勝を果たした。
言うまでもない、岡田は早大OBだ。母校愛もなかなかに強い。「今年は慶応の年か。高校野球でも勝ったしのう」-。囲み取材の中にいた慶大OBのベテラン記者に向け、悔しそうにそう話した。それでもボヤきは続く。
「小宮山がおまえ『阪神にあやかって絶対優勝します』いうてメールしてきてたのにのう」。ロッテなどで活躍し、現在は早大監督を務める小宮山悟から届いたメールに自ら触れるなど諦めきれない様子だった。
オリックスとの決戦を前に、そんな話が出るほどリラックスしているともいえる。理由はもちろん、戦いの舞台が甲子園に移るからだ。DH制のない9人野球は当然、大声援の慣れ親しんだムードがある。京セラドーム大阪も阪神にとってはホームとしても常々、使う球場だが、やはり、ひと味違うのだろう。
「あれ以上の声援ないよ。それ以上、客入らへんやんか。シーズンも、もう今までいっぱい入ってるんやから。おまえ、もういっしょや。あれ以上、大きな声出えへんやろ」
チケットは当然、第5戦まで完売。3試合とも満員の大歓声が期待される。京セラドーム大阪ではオリックスの意地でほとんど半々に分かれていたが甲子園では虎党の勢いが大きくなることが予想される。
唯一、ドーム球場より不利なのは気温だろう。それでも暖冬が予想される今年、甲子園もこの時期、例年より暖かい感じだ。「寒いかもなあ。夜はちょっと。CSはそうでもなかったけど。今回はちょっと寒いかも分からんけどな。でも、そんな気持ち入ってたら寒いとかないやろ。選手は」
1勝1敗とはいえ、日本のエース・山本由伸を打って勝った結果はやはり大きい。愛してやまない聖地・甲子園でシーズンの戦いができれば、38年ぶりの栄冠に近づける。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




