4万2601観衆の多くを占める虎党からタメ息が漏れたのは最後の攻撃だ。2点を追う9回。1死二、三塁から8番・木浪聖也が遊撃に深いゴロ。これで三走・大山悠輔が生還し“内野安打”と思った瞬間だ。
二走・島田海吏が帰塁できずに憤死。1点差に迫り、なおも1死一、二塁となるはずが2死一塁となった。木浪の一打も「遊ゴロ」に。虎党も木浪も、そして阪神ベンチもぼうぜん。あまりにも痛い走塁ミスとなってしまった。
ミスはダメだ。それでも起こるときは起こる。甘いかもしれないが、この4月にそれを責める気は、正直、起こらない。それでなくともギリギリの戦い。指揮官・藤川球児もそこを聞かれ「その前からですね。あまりうまくゲームが運べなかったというところですね」と、中日先発の松葉貴大を攻めきれなかった試合の流れを語ったのである。
そんな中、「これはいいな」と思ったプレーがあった。焦点となる島田のミスが出た直後だ。2死一塁となり、木浪の代走に出たのは植田海。ここで植田は二盗を敢行し、見事に成功させるのだ。敵将・井上一樹はリクエストを要求したが、判定は変わらず「セーフ」。続く小幡竜平の右前打で2死一、三塁と最後まで見せ場をつくったのだ。
「グリーンライト(のサイン)が出ていたので。いいスタートが切れました。頑張ります」。敗戦に言葉少なだったものの植田はそう話した。まさにここが仕事場という「走塁のスペシャリスト」として仕事をした顔だった。
実は植田はグリーンライト、つまり「行きたいときに行け」というサインがあまり得意ではない…。そんな話を以前に聞いたのは外野守備走塁コーチの筒井壮からだ。得意ではないというのは語弊があるかもしれないが、つまり、こういうことだ。
「(植田)海は間違いなくセーフになるタイミングでないといかない、走らないタイプですね。だから盗塁数そのものはあまり多くならないかもしれない」
頭から二塁に飛び込んだこの日もきわどいタイミングだった。アウトになれば-。そう思えば、相当な勇気がいったと思う。それでも、それを成功させたことは、今後につながるし、プロの意地を見た気もする。この日、セ・リーグは3試合とも1点差決着。混戦の続くセ・リーグで、植田のその存在はやはり重要だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




