いかにも痛い。今季得意にしていた敵地の試合で中日に同一カード3連敗。せっかくの佐藤輝明10号も1戦目の9号に続いて空砲となった。2試合続けて1点差での敗戦で、阪神はなかなかにピンチである。

決勝点は同点の5回。2死一、三塁、打者・高橋周平の場面だ。先発・大竹耕太郎が高橋に投じた2球目で一走・上林誠知がスタート。捕手・坂本誠志郎は二塁へ送球する。遊撃・小幡竜平がこれを捕球したが上林は速度を緩めた。小幡はこれを一塁方向に少し追う形でタッチアウト。その間に少しだけ早く三走・岡林勇希が生還したのだ。重盗というより、こうなるのを期待した走塁だろう。

この作戦にどう対応するかは状況によって違うかもしれないが、多く見るのは投手が捕手の送球をカットする場面だろうか。いずれにしても一瞬のスキをつかれた気もするプレーだったと思う。まんまとやられた感じがするのだ。

この攻撃を含め、今季初のバンテリンドームは、敵将・井上一樹の「なんでもあり野球」にやられた3連敗だった気もする。前日は9回2死満塁のサヨナラチャンスで山本泰寛にセーフティー・バントを命じる奇策に出る。これに失敗したとき、井上は歯を見せて笑っていた。その“毒気”に当てられたように延長11回、阪神はバッテリーミスが出て、負けてしまった。

言うまでもないが井上はかつて阪神でヘッドコーチを務めた人物である。元監督・矢野燿大の時代だ。「かつて」と言っても最近のことなので、現在の阪神主力についてはまず全員、知っている。特に佐藤輝明には懸命に指導していた。

自ら「オレはコミュニケーション・モンスターですから」というほど、誰にでも開けっぴろげに接する。こちらの見立てだが物事にこだわりがない性格。だからなのか近年、低迷が続く中日を率いて、思う存分、好きなように戦っているように見えるのだ。

対して最近の阪神は強く、23年に日本一になったばかり。いわば「王道野球」が身についている。こんな戦いをされると、受ける方としてはつらい。勝つには投打で圧倒することが必要な気さえしてくる。これで中日には2度の対戦で1勝3敗(雨天中止が1度)。今月は甲子園とバンテリンドームで、まだ6試合が予定されている。気を引き締めていかないと本当に食われてしまう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)