「スミ1」という言葉は聞くけれど「スミ6」はあるのだろうか。Aクラスを狙う広島との戦いは1回の攻防で決着したように見える。6-1と阪神の圧勝。しかし広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)がいつも言うように勝負は常に「紙一重」だ。この日にしても接戦になっていた可能性はあった。

放った安打数は阪神の「9」に対し、広島は「7」。阪神は失策も記録している。広島先発の森翔平は1回こそ乱れたものの、その後は持ち直していた。それこそDH制だったなら続投していただろう。阪神先発の大竹耕太郎は1回、暴投で1失点するなどイヤなムードでの開始だった。

それがこの結果である。もちろん、大山悠輔の満塁弾が大きい。1回の波状攻撃、森下翔太の同点適時打も効いた。そんな中で「いいなあ」と感じたのは無死一、三塁で佐藤輝明が四球を選んだ場面だった。

2-2の平行カウント。そこから外角低めを2球見逃し、一塁へ歩いた。これで満塁に。もう四球は出せない森が投じた初球チェンジアップが真ん中に入り、大山の一撃が出る。まさに「四球の後の初球」。これでショックを受けた森から大竹までが適時打を放ち、一気に6点である。

「いいな」と思ったのは佐藤輝がじっくり球を見極めたからだ。ここまで36本塁打をマークしている佐藤輝、セ・リーグ球団からはほぼまんべんなく打っている。DeNA戦の4本が最少で、あとは中日とヤクルトから7本、巨人と広島から6本という感じだった。その広島戦でここまで2本塁打を記録しているのが、この日の森だ。

森相手に試合前まで13打数4安打の2本塁打、5打点。左腕ながら広島でもっとも得意にしている投手なのだ。1回、あの押せ押せの流れを考えれば、少々のボール球でも振っていきそうなもの。だが、そこをこらえ、満塁にした。そこに今季の成長を感じる。

「よかったんじゃないですか。つないだんで。(よく見えていた?)はい。つながってよかったです」。柔和な表情で四球を振り返った佐藤輝だった。

「このままずっと(マジック)3とか2のままいかないかなと、ぜいたくな悩みはありますね。非常に幸せな時間」。指揮官・藤川球児はそう振り返った。虎党も同じ思いだろう。それでも“その瞬間”はやってくる。(敬称略)

阪神対広島 1回裏阪神無死一、三塁、四球を選ぶ佐藤輝(撮影・上山淳一)
阪神対広島 1回裏阪神無死一、三塁、四球を選ぶ佐藤輝(撮影・上山淳一)
阪神対広島 阪神先発大竹(手前)は初回を投げ終えベンチへ引きあげる。左は佐藤輝(撮影・上山淳一)
阪神対広島 阪神先発大竹(手前)は初回を投げ終えベンチへ引きあげる。左は佐藤輝(撮影・上山淳一)